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P O O L S I D E 15


跡部の宣言通り、氷帝学園は関東大会への切符を手に入れた。
宍戸はその日も部活を欠席して一人練習に明け暮れていた。
そして、たまに部室棟の裏を覗いて、あの少年――鳳と会っている。

鳳は自分を名字で呼んでいたし、宍戸も少年を鳳と呼ぶことにした。
下の名前は聞いていないが、気になった時に聞けばいい。それよりも宍戸は特訓のことで頭がいっぱいだった。

土曜日。
一刻も無駄にしたくない思いであったが、あまりの炎天下に宍戸は少し休憩を挟むことにする。
いつぞやのように忍び込むのではなく、コンビニで買ったアイスを持参してプールへ向かう。

「…立ち入り禁止ですよ」

しかし毎度のこと鳳はあまりいい顔をしたことがない。
水泳部員でない一般生徒、しかも一度溺れかけている宍戸をあまり近づけたくないようだ。
じっと睨む鳳に、宍戸は内心可笑しく思いながらも無表情でビニール袋を突きつける。

「暑い。少し涼ませろ」
「ですから、立ちいり…」
「先輩命令だ」

また開きかけた口を無視して、靴とシャツを脱ぐ。ハーフパンツの裾を少し捲ると、鳳はもう何も言わずに、怒ったように目を逸らしてしまった。
一週間ほど続けた特訓で、すでに宍戸の身体は傷だらけだ。
どうやら鳳はそれを見て一人勝手に痛ましい気持ちになって、宍戸の横暴な振る舞いに口出しできなくなるようだった。

「ほらよ。溶けちまう」

俯く鳳の頬にアイスをくっつけると、彼は冷たさに飛びあがって、そしてやっぱり怒った。
それでも結局受け取って、宍戸が隣に座ると一緒にアイスを食べ始める。

きっと鳳が短気なのではなく、自分の接し方が悪いのだろう。
これまで部活を自分の練習だけに集中してきた宍戸にとって、後輩は未知の生物も同然だった。
偉そうに振る舞ったことしかなくて、近づき方がいまいちよく分からない。
だからよく鳳の機嫌を損ねてしまうが、すぐに立ち直り「宍戸さん、宍戸さん」とくるものだから、言ってしまえばそこに甘えているのだ。
特訓の合間に鳳を構うのは良い気分転換になった。





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