◆P O O L S I D E | ナノ


P O O L S I D E 10


テニス部は実力主義。
そして、宍戸には正レギュラーへ戻るための実力がある。
あの時は油断してしまっただけ。

掟を無視するならば、またあそこへ戻るには実力を見せつけ、周りを黙らせれてやればいいと宍戸は考えた。
そのために手っ取り早いのは、監督か部長に認めてもらうこと。
監督は話を聞いてくれたとしても、レギュラーへ戻すことまでは認めてくれないだろう。
敗者切り捨ての掟を作ったのは榊だ。自分でそれを崩すというのは考えられなかった。

では、跡部ならば。
榊と同じだろうとは思う。
けれど、コートに入り、大会で使えるという力をみせてやれば、あるいは可能性があるかもしれない。
跡部の強さは十分に知っている。
今まで一度だって勝てたことはない。
しかし他に方法はなかった。
全身全霊で一勝を奪うしかなかった。

翌日から宍戸は部活を欠席した。




数日後、部活へ顔を出した宍戸に跡部は無表情で相見えた。
怒ることも笑うこともせず、冷たい形相をしている。

「放課後、少し時間が欲しい」

正レギュラーの部室はしんと静まり返っている。
二人以外にも部員はいたが、皆一様に驚き、声を失っていた。

「何故だ。今さら何の用がある?」
「……今は、話せない。部活の後、テニスコートで待ってる。ラケットも、持って来てくれ」

そう伝えるので精いっぱいだった。
のどが渇く。
青い瞳に、身体が動かなくなっていく。
宍戸はそれだけ言い切ると、どうにか怯えを隠したまま部室を去った。


部室を出るとそのまま駆け出した。
なせだろう。
怖い。
身体が震える。
跡部と戦うことが怖いとは思わない。
すると、負けるかもしれない、そのままレギュラーに戻れなくなるかもしれないということだろうか。
分からない。
怖い。
何かが恐ろしい。





<< Text | Top

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -