P O O L S I D E 9
宍戸も彼のことは容姿しか分からない。
学年も名前も、互いに何も聞かなかった。
その後、誤解も解けたのか宍戸は解放された。
さすがに少年探しは断念してそそくさと部室棟へ戻ったが、宍戸はやはり彼のことが気になった。
『明日は最高な日かもしれないっすよ』
あのときの少年の言葉が浮かぶ。
今日もかなり最悪だった。
でも。
『今日こんな最悪だったんだから。明日は最高に良い日かもしれない』
『明日があるじゃないですか。ね?』
少年が笑う。
「……明日、か」
落ち込んでなんかいられない。あいつの言うとおりだ。
最悪な今日でもやるべきことは見つかった。
明日はなにか希望が見つけられるかもしれない。
部活後、居残り練習もしてすっかり暗くなってから帰宅した宍戸は、へとへとに疲れていて、すぐにベットへ入った。
テニスから解放された頭でふと思い出すのは少年のこと。
簡単に見つかると思っていたけれど、氷帝学園はやはり広いし、生徒数も半端じゃない。
きっと水泳部員だと思ったのだが、違ったのだろうか。
宍戸は少し考えてみたが、すぐにやめた。
もう一度会えたら、聞いてみればいい。
まさかあれっきりということはないだろう。
今は自分のことをどうにかしなければならない。
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