◆P O O L S I D E | ナノ


P O O L S I D E 9


宍戸も彼のことは容姿しか分からない。
学年も名前も、互いに何も聞かなかった。

その後、誤解も解けたのか宍戸は解放された。
さすがに少年探しは断念してそそくさと部室棟へ戻ったが、宍戸はやはり彼のことが気になった。


『明日は最高な日かもしれないっすよ』


あのときの少年の言葉が浮かぶ。


今日もかなり最悪だった。
でも。


『今日こんな最悪だったんだから。明日は最高に良い日かもしれない』

『明日があるじゃないですか。ね?』


少年が笑う。


「……明日、か」

落ち込んでなんかいられない。あいつの言うとおりだ。
最悪な今日でもやるべきことは見つかった。
明日はなにか希望が見つけられるかもしれない。


部活後、居残り練習もしてすっかり暗くなってから帰宅した宍戸は、へとへとに疲れていて、すぐにベットへ入った。
テニスから解放された頭でふと思い出すのは少年のこと。
簡単に見つかると思っていたけれど、氷帝学園はやはり広いし、生徒数も半端じゃない。
きっと水泳部員だと思ったのだが、違ったのだろうか。
宍戸は少し考えてみたが、すぐにやめた。
もう一度会えたら、聞いてみればいい。
まさかあれっきりということはないだろう。

今は自分のことをどうにかしなければならない。





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