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しあわせな失恋エピローグ 4


「わっ!ち、長太郎」
「会計終わりました…って、何か見てるの?なんです?」

宍戸が覗く本棚の向こうを、会計から戻ってきた鳳がなんだろうという表情で覗こうとする。

「あ、バカッ…ダメだ!」

宍戸は慌てて小声で叫ぶと鳳を押し返した。

「なんなんです?」
「えっと、その…」

宍戸もかなり驚いた亜矢の本性を、彼氏の鳳が見るのはますますショックかもしれない。可愛い彼女と思っているだろうに。

「だ、から………」

亜矢は、鳳の愛情を独り占めできる彼女なのだ。

「宍戸さん?」

それなのに浮気するなんて。
鳳を大切にしないなんて。
両の拳に力が入る。
俺の方が長太郎を大事にできる。
俺の方が長太郎のことを想ってる。

「俺の方が亜矢のこと好きだ…!大事にできる…っ」
「一回エッチしたくらいで変なこと言わないで!もう、うざいな」
「じゃあおまえの彼氏はどうなんだよ!?3か月も付き合ってセックスなしなんて、そいつホモなんじゃねえの」
「…っるっさいな!鳳君は違うもんっ。むしろ宍戸っていう鳳君の先輩がそうなんだから。絶対そうよ、本当にうっとおしいのよ。先輩だからって鳳君のこと振り回して……私と鳳君の前から消えて欲しいの!邪魔なのっ」

またぶり返したように言い合いを始める二人。
暴言を吐かれた宍戸は、亜矢に自分の気持ちを見抜かれていたことに硬直してしまっていた。

「な…」

それは隣にいる鳳に聞こえないはずがない。

「…亜矢…?」
「…あっ、あのな、これは……わっ。ちょうたろ、待て!…」

阻む宍戸を脇に退けると鳳は本棚の向こうに出た。
男と言い合っていた亜矢は、突然現れた鳳に目が点になる。

「お、鳳君!?」
「え、こいつがオオトリ?」

でけえ、と感心する男に、サーッと顔が青くなる亜矢。
宍戸にはもうどうすることもできない。
鳳には最悪の形で二人のことがばれてしまったし、信じたかどうかは分からないが、自分が鳳をどう見ているのかも暴露されてしまった。

「ど、どうしてここに…」
「本、観に来たんだけど。亜矢は?」

顔は見えないが、その広い背中は穏やかさを消している。

「…わ、わたしは、」
「男とデート?」
「ち、がうよ、違うよ。そんなんじゃない」

鳳の後ろに立っていた宍戸は、覗き見えた亜矢のあまりの怯えように自分も恐ろしくなってしまった。
亜矢の裏切りに熱くなっていた男も顔を強張らせて、鳳を見上げたまま徐々に後退りし始めている。
宍戸も亜矢の浮気にあれだけ頭に血が上っていたというのに、熱はどこかへ飛んでいった。
その場にいる全員が、鳳の醸し出す冷気に凍りついてしまっている。

「…さよならだね」
「っま、待って!…た、確かに浮気みたいなことしちゃったけど、鳳君が好きだからしちゃったの。全然求めてくれないし、その先輩が鳳君のこと連れ回すから全然一緒にいられないんだものっ」

その先輩、と鋭い目つきで睨まれた宍戸は思わずうろたえた。
今ようやく気が付いたが、男の宍戸を敵対視するほど亜矢も鳳が好きだったらしい。

「行こう、宍戸さん」

ところが鳳は宍戸の腕を掴むと亜矢を無視して歩き出す。

「えっ、おい…ちょう、」

こんな話し合いも無しにさよならなんて、いいんだろうか。
応援してるわけじゃないけど。

「鳳君っ。い、一回くらいで、そんなっ、」

当然言い募る彼女に、鳳は静かに足を止め、振り返る。

「そうだね。一回くらいの浮気は許してあげるけど」
「…よかっ…」
「二度と宍戸さんを侮辱するな」


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