ミ★1st Anniversary! | ナノ
初恋リプレイ 6


テニスコートへ向かっているはずが、長太郎は突然男子トイレのドアを開き、奥の個室に俺ごと転がりこむように入った。
そして叫んだ。

「なんなんだよアイツ!!」

怒るようにそう吐くと、長太郎は俺をきつく抱きしめた。せ、背骨が折れそうだ…。

「宍戸さんにベタベタして…感じ悪いです、あの先生!」

長太郎がこんなに怒るのはとても稀なことで、俺は咄嗟に言葉がでなかった。
目の前の首筋から少し汗の匂いがする。もしかして、あそこに来る時、走って来たのか?
また背中を包み込む腕に力がこもる。
苦しいけど、俺はなぜかそれに安心感を覚えた。
小林に触られた時はあんなにイライラしたのに。
長太郎には痛くされても、愛情を感じるからだろうか。
嫌じゃない。むしろ、うれしかった。

「……俺もさ、アイツ苦手なんだよ。助かったぜ、長太郎」

サンキュ。耳にささやいてキスすると、長太郎の身体から力が抜けた。
そうだった。長太郎は、不安な時と興奮してる時以外は、俺に優しく触れてくれる。
見つめ合うと、長太郎は困ったような悲しそうな顔をしていた。
にっと笑ってまたキスをしてやると、ぽつりと名を呼ばれ、唇が近付いてくる。
2度、3度とキスを繰り返し、差し出された長太郎の舌を迎え入れ、深いキスを交わす。
よく分からないけど、俺も無性に長太郎を感じたい気分だった。
それが目の前のネオ長太郎でも、戸惑いなく飛びつきたいと思うくらい。
そういえば、俺からこんなふうにしたのってすごく久しぶりな感じがする。

「なんだか、今日の宍戸さんは積極的な気がするんですけど」
「トイレに無理やり連れ込んだの誰だよ?」
「キスは先輩に唆されたんですもん」

俺がプッと吹きだすと、長太郎もつられるようにして笑った。
すっかり苛つきは治まっている。長太郎も、もう大丈夫みたいだ。
もう一度抱きしめ合うと、長太郎はぎゅっと俺に密着して、肩や背中を擦った。
ちょうど、小林に触られたところに知った体温と感触が浸透して、癒されるようだった。
昨日まであんなにくっつかれたくないと思っていたのが嘘のように、身体がその温もりを欲している。

「……あっ!」
「どうしました?」
「おまえ、テニス部に用事は!?」
「あぁ、それ嘘ですよ」
「え?」

なんでも、長太郎が中等部の校舎の周りをランニングしていると、高等部の廊下で俺が小林に絡まれてるのが見えたらしい。慌てて俺に電話を掛けたけど出ないもんだから。こっちの校舎に殴りこんできて、さっきのあれ、タオルを投げつけて登場、となったそうだ。

「宍戸さんの腰抱いて、セクハラ教師じゃないですかアイツ!」
「……いや、俺、男だし……」
「なに言ってんスか!?宍戸さんの魅力は老若男女問わずなんですよ!そんなの関係ありませんよ!」
「アホ。ちょっと教師に絡まれてたからって、話が飛躍しすぎだ」
「もぅ…自覚してくださいよー。この頃は色気も出てきて、ますます宍戸さんのこと心配なのに…」

長太郎は凛々しい眉を困惑気味に下げて、唇も尖らせて子供みたいにいじけてる。


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