◇いただきもの | ナノ



月の下に二つの影 8

「嫌いな訳ねぇだろ、俺は長太郎がそういう性格だって分かってて付き合ってるんだから…」


トクンと胸が高鳴った。

宍戸さんの言葉が俺の中に溶け込んで、嬉しいのに、うまい言葉が出てこない。

だから俺は、コクンと彼の首元で頷くことしか出来なかった。


「言っとくけど、俺だってお前と恋人らしいことしてぇと思ってんだよ。跡部に相談してたのは、そういうことだ。」

「…そう、だったんですか。」

「それにな、野郎と付き合うっていうのは、それなりの覚悟がねぇとできねぇことくらいお前だって分かってんだろ、…ちょっとは俺に好かれてる自覚もちやがれ、バカ。」

「宍戸さん…ごめんなさい、俺…本当にバカでしたね、…大好きです。」

「…知ってる。」


そう言った宍戸さんの顔は、茹蛸みたいに真っ赤で、後ろにいる俺でも、そのことが分かってしまった。


首まで赤いよ…


それに、服の上からでも、彼の身体が運動後みたいに熱いのが伝わってくる。

でも、それは俺も同じこと…

恥ずかしいのもそうだし、嬉しさと緊張で心臓がうるさいくらい脈打ってるんだから。


「宍戸さん、」


俺はそっと腕の力を抜くと、彼の耳元で静かに名前を呼んだ。

それに合わせて、宍戸さんがチラッと俺を盗み見てくる。

ニコッと微笑みながら、俺は再び彼の耳へと唇を寄せた。







「キス、しても良いですか??」







宍戸さんが俺の方へ振り向いてくれたのが合図。

そっと瞳を閉じた彼の頬に、手をそえて、ゆっくりと顔を近づけていった…






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