◇会話文 | ナノ



月夜の下で

「あーあ、すっかり遅くなっちまったな。侑士、月見えるー」
「せやなぁ、白熱してしもたわ。岳人もえらいぴょんぴょん跳ねるし、おっちゃん追いかけるのしんどいわ…」
「侑士はすぐ手抜くの悪い癖だっての!気にいらねぇな」
「ああん、がっくん。そないなこと言わんといてぇ」
「うっせ。ちんたら歩いてないで早く来いよ」
「んな殺生な…、ええ加減、ジローが重たいねん。腕も足もしんどいわ。助けて…」
「Zzz…」
「えぇー。俺、疲れてるんだけど」
「いや、俺もやから!」
「起こせよ」
「無理。も、跡部呼んで起こしてもらお…?」
「それこそ無理」
「ああ…なんで寝てしもたん、ジロー?あんなにはしゃいどったのに……もう…もう俺、歩けへん…!」
「Zzz…」

「あ、」

「どうしたん?」
「見ろよ、前。宍戸と鳳が歩いてるぜ!」
「……あ…」
「Zzz…」
「やったじゃん、侑士!鳳に背中の荷物預けちまえよっ」
「……完敗や、…いや乾杯やな、2人の愛に…!」
「は?なになに、おまえ頭平気か?」
「がっくん、よぉ目ぇ凝らして見てみ」
「え?」
「2人の手んとこ」
「え…あ。ゲ!手繋いでるのかよ!?あんまし見えねぇけど」
「フゥウ〜お熱いやーんっ!野暮なこと出来んわ!」
「…侑士の気遣い、キモいな」
「Zzz…」
「しゃーないっ!俺、頑張ってジロー背負うとくわ!めっちゃ頑張ったるで!!なぁ岳人、バス停もうすぐやろ?」
「うん。宍戸達とおんなじ方向に10分くらい行ったとこ」
「ええ?なんの巡り合わせや!?生でラブロマンス観賞て…!」
「…俺はあいつらが往来でキスしないように願ってる…」
「Zzz…」
「まったくこないな時間まで何してたんや。今も人ん目の前で恥も知らんとラブラブイチャイチャベタベタチュッチュと」
「してねぇから!どうせテニスだろ」
「ほなら明日休みやし、この後…!」
「…う…、確かにあっちは宍戸ん家と反対方向…」
「ほんで鳳邸の方向や!あの手の理由はおそらくこうや…」
「やめろ!微妙にリアルな妄想はやめてくれ!」
「ふふふ…まぁ聞いて損はあらへんで、がっくん?…えーとな、始まりはこうや。静かな帰り道…宍戸とエエコトできるからて浮かれた鳳がそっと指を絡ませてきてん。『大丈夫。誰も見てまへんから。今夜一緒に過ごせるのが楽しみで、俺…。ちょっとだけ、な?』なんて、極上スマイルかましたんやろな。そして今夜のことが照れ臭い宍戸!振り払いたい、せやけどその手を離せずに『バーカ。…俺も、やで』…とかホンネと強がりがこうバランスよく…な!?分かるか岳人!?謎はすべて解けたで!!今夜はきっと…!」
「もう嫌だ!こんな推理聞きたくねぇっ!――っつーか、みんな関西弁になってるから!特に鳳のセリフ!すっげーキモい!!」
「Zzz……Zzz…」




End.





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