◇会話文 | ナノ



跡部塾の日常

※どうしようもない話です…




「人の顔に泥塗っておいて許せだ?ふざけてんのかなぁ」

薄暗い廃墟。
男達の輪の中心に、地べたに這いつくばる血塗れの男と、その前に憮然と立つ男がいた。

「す、すいません!鳳さ…」

男は鉄パイプで顎を持ち上げられながら必死に謝ったが。

「二度も失敗する脳ナシはいらねぇんだよ」

鳳は唇に弧を描きながら鉄パイプを振り上げた。


「やめろ!長太郎!!」


その時一人の男が現れた。
短い黒髪に、同じく黒い強気な瞳。
…と、ノンフレームの眼鏡に白衣姿。聴診器を首に下げ、両手に注射器とカルテを持っていた。

「あ?誰だ……あーっ、宍戸先生!どうしたの?俺に会いに来てくれたの??」
「それ以上やったらソイツ死んじまうだろ。やめろよ!」
「え?あっ、うん、やめるやめる。もういいよお前。どっか行けば」
「す、すんませんっした!!しし失礼します!」

男は足を引きずりながら一目散に逃げて行った。

「お前らも即刻解散な」
「「は、はい!」」

「良かった…ギリギリ間に合ったぜ…」

鳳は手下の男達に解散を告げるとすぐさま宍戸に飛びついた。

「しーしどせんせっ」
「おわっ」
「今日はお医者さんなの?かわいいー」
「ちょっ…顔近い!」
「ナースも見たいな」
「…ふざけんな。つーかおまえまたイっちまってただろ!…もしあの時俺が来なかったら…」
「えー?だってどうしようもない馬鹿だったからさあ」
「…あのなぁ、おまえはいつも頭に血が昇って…」
「あー分かったってば。お説教は後で聞くから。ていうかさ…先生すっげー可愛いね。……俺、勃ちそうなんだけど…」
「バッ!変態かおまえは!!」
「あはは。けど男相手に興奮するとかマジ変態かも。別にいいけど。だって誰かにこんな興味わいたの初めてだから…」
「(ぞわわわ)…ハハハ…笑えねぇよ、長太郎君…」
「ご褒美ちょうだい」
「ご!ご褒美って…、またかよ…!?」
「俺ちゃんと約束守った!不動峰との抗争もやめたし、期末考査で学年一位取った」
「えっ…本当、か?」
「宍戸先生のご褒美欲しくて頑張りましたよー!俺の家来てくれたらテスト見せてあげる。100点もあるんだよー。なんと3枚。でも全部俺の部屋にあるんだよね…残念…」
「……ちょっと待ってろ」
宍戸は鳳から離れると金ぴかの携帯電話を取り出し、リダイヤルボタンを押した。



>>跡部邸

PLLL...

「…ウス…こちら跡部塾…、跡部校長。宍戸先生から緊急のお電話です」
「――おう、どうした宍戸。うまくいったか?まぁ俺様の読みが外れるわけがねぇよな。ドクターコスプレに夢中になっただろう、長太郎め…跡部塾始まって以来の馬鹿生徒も俺様の頭脳と財力を持ってすればあっという間に学年トップだ!おい、宍戸。おまえも俺様に貢献できることをありがたく思うんだな。フハハハハ!フハハハハハ!ハハハ…アーン?…ご褒美?ああ、特別報酬制度のことか。今日の内容?ちょっと待ちな。――樺地、例の書類を持って来い」
「ウス」
「…次のご褒美は…ああ、これだな。おい宍戸。今日のご褒美はキス2回と問診、触診3分間ずつだ」



>>廃墟


「はぁ!?先週まで1回だったろが!てか、触し…!?カルテに書いて…?うっわ!ちょ、こんなん無理だって!俺なんかされちまうよ、あいつ変に興奮してなんかするよ絶対!!聞いてくれ、さっき長太郎が俺のことみて勃ちそうとか言ったんだ!そ、それに…これからあいつの部屋に行かなきゃなんねーし………なぁ、跡部…俺もう長太郎の担当外れたいんだけど。なんとかなんねぇか?いくら報酬が普段の3倍だろうと…ん?おい、跡部?跡部先生いますかちょっとおいこら?もしもし!?ちょっ…マジで返事しろよコラ!!ツーツー聞こえんぞ!」

「しーしーどーさぁーん」

「!!」
「…ご褒美ないなら、俺、不動峰行って来るけど…」
「バカ!そんなことしたら内申に響くだろ!せっかく親御さんが希望してる大学へ行ける偏差値とったのに…」
「俺だって、親のためじゃないけど、先生のためにその氷ナントカって大学行きたいよ。そしたら先生一日デートしてくれるっていうしさ。……でも…不動峰に気に入らない人がいて…俺、イライラして……我慢できないこともないけど…」
「………」
「今日はお医者さんごっこ?先週の警察官もなかなか良かったけど…これはベタな割に結構ムラムラするっていうか…。あーもう、先生ってなんでも似合うな。そこら辺の女より断然可愛いっスよ?」
「い…いいか!?いつも言ってるけど、おまえは一切動くなよ、いいな!?(怖ぇえ!)」
「はぁーい!」
>>跡部邸

「…かれこれ2時間、か…」
「……ウ、ウス……」
「返信来ねぇな。ま、責任感の強いあいつのことだ、しっかり任務遂行してるだろう。なぁ樺地?」
「ウス」
「この調子でいけば学年最下位だった鳳の名門大学合格は確実だ。これで跡部塾も株が上がるってもんだな!ハッハッハ!ハーッハッハッハッハ…!!」
「ウ、ウスッ…!」




End.

おわりますみませ…drz





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