◇会話文 | ナノ



ユニット!

2年レギュラーの鳳と樺地と俺の3人で、引退する3年生に向けてなにか出し物をすることになってしまった。
跡部部長の独断でそう決まった時から俺は、追い出し会当日、学校が野良猫の集団に占拠されて立ち入り禁止にでもならないだろうかと鬱々と念じ続けている。

「無難なところで歌なんてどうだろう?」
「ウス」

ところがしかし、同級生二人は出し物に乗り気だった。
まぁ、鳳と樺地には己の命ほど大切で尊敬している先輩がいるからな。精一杯感謝を込めて送り出したいのだろうと思ったが。
そんな二人を見て、別に感化されたという訳ではないが、俺も最後くらいあの人達の後輩らしくしてみるかと思い直してみた。

「それでいいんじゃないか」
「賛成してくれる?じゃあ…あっ!そういえば日吉ってカラオケ苦手なんだっけ。ごめん、忘れてた。歌で大丈夫…?」
「別にいいぜ。カラオケは大勢でワイワイはしゃぐのが嫌いなだけで、歌うこと自体に問題はない。それより…なんていうか、その…鳳さ……おまえこそ歌でいいのか?宍戸さんの前で歌っても大丈夫なのか?」
「うん!俺、この前宍戸さんに“おまえの歌声は和むな”って褒められたんだ!きっと喜んでくれると思う」

なご…うーん?

「そ、そうか…」
「樺地なんてね、リズム感良くて跡部先輩と歌わせたら息ぴったりなんだから!ね?」
「…ウス」

まさか相の手だけじゃねえだろうな。『ウス!』だけじゃねえだろうな。………。

「まあいい。それじゃ歌を贈るということで決定だな。では何の曲を…」
「まずはユニット名だよね!」
「ウス」
「……分かった。まずはユニット名を決める。張りきっているが鳳、なにか考えでもあるのか?」
「あるよ。もちろん」
「ほう。聞かせてみろ」
「“レミオロメン”って知ってる?その人達も俺達みたいに3人なんだけど、グループ名付ける時に、それぞれ“レミ”“オ”“ロメン”って好きな言葉を繋げて作ったんだって。おもしろい方法だなって思ったんだけど、そういうのどうかな?」
「ふーん…。まぁ、いいんじゃねえか。誰か一人で付けるととんでもないことになりそうだからな」

鳳とかな。
『激○○』とか『チーズ○○』とかされたらたまらないぜ。

「そうだよね。日吉とか『下剋上等!』とか言いそうだし」

「なんだと!俺そんなに下剋上ばっか言ってねーぞっ!なぁ樺地!?」
「………」

なんで何も言わないんだよ樺地…ウスくらい言ってくれても…。

「よーし!俺、書ーけた」
「俺も…書けた…」
「あ!ちょ、ちょっと待て。俺はー……あー…えっと……」

畜生!『下剋上』しか浮かんで来ねえ…!!




* * *




「――よし。それぞれ好きな言葉をメモした紙を、一度シャッフルして……並んだ言葉をユニット名とする。いいな?」
「はやく〜」
「キモいんだよ鳳。……では発表する。俺達のユニット名は『跡宍No,1☆』だ」


鳳がメモを粉砕した。




End.

すみませんでした。





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