さやかに星はきらめき 5 「ただ、そろそろお礼だけじゃなくて、他の言葉も聞きたいなぁと」 「え?」 「俺が宍戸さんのことそういう意味で好きって気付いてくれたんですよね。でしたら返事が欲しいんですが」 「……あ…、え、っと…」 そんなことを言われても、今ようやくその意味に気が付いたのに。 いきなり答えを出せなんて、そんな。 けれどそんなことを言っていたら、いつまで経っても返事なんてできない。それに長太郎のことをすでにたっぷり待たせ過ぎているようだし。 「宍戸さんは、俺のこと好き?それとも嫌い?」 「……き、嫌いじゃないけど……」 「宍戸さんも、俺を嫌いじゃない?じゃあ、好きってこと?」 「…ああもう。なんだよ、質問ばっか」 「大事なことだから」 その通りではある。頭では分かっていても気恥ずかしさは治まるものではなくて、俺はうーん…、えーっと…などと唸って決心を固められずにいた。 嫌いじゃない、つまり好きだと伝えたらどうなるんだろう。これまでの関係は壊れてしまうのだろうか。もし……、もしも恋人になったなら、どうなってしまうんだろうか。 沸々と沸き上がる不安に返事を言葉にすることができず、そっと告白してきた相手を見上げる。 気付いた長太郎は優しい顔で微笑んでくる。 いつでも笑顔の奴だな。 ―――……笑顔…。 その瞬間。俺は長太郎のその顔を見て、とても良いことに気が付いた。 自分が、何を望んでいるか、気が付いた。 するとあれだけ咽喉に引っ掛かっていた言葉もすんなり声になっていく。 「長太郎」 「はい」 俺もかなり緊張していたけれど、長太郎からもかすかにこくんと咽喉を鳴らす音がした。 真顔になった長太郎を見上げると、勇気を出して声を振り絞った。 「俺も、おまえのこと、が…好きだ。……あ、と……いままで気付かなくて、その、悪かったな」 言い終えた安心感に照れ臭いながらもわずかな苦笑を洩らす。 長太郎の顔は満面の笑顔になると思いきや、みるみる余裕をなくして切なそうに歪んでいった。 「…ちょうたろ、」 名前を言い切る前に、俺は思いきり長太郎の方へと引き寄せられた。 自分よりも大きな体に強く、強く、縋りつくように抱きしめられた。 「お、俺もっ……俺も、宍戸さんが、大好きです。ずっとずっと、好きでした。怖かったけど、告白しないと、どうにかなっちゃいそうなくらい、好きでした」 肩でくぐもった声が、必死にそう伝えてくる。 「……うん」 人目も憚らずに道路の真ん中で抱きしめられて、けれど俺は抵抗しなかった。 笑うことも微笑むこともせず、切なげに感情を吐露する長太郎を見ていたら、その背中をそっと撫でてあげようかという気分になったのだ。 馬鹿で鈍感な俺は、長太郎が本当は笑う余裕もないくらいにいろいろ悩んでいたのだと、そのときやっと気が付いたのだ。 しばらくぽんぽんと背中を叩いてやっていると、長太郎はやっとこちらへ顔を見せた。 そして、少しだけ涙ぐんでいたけれど。 ようやく俺の待ち望んでいた顔をした。 長太郎に好きだと伝えたら、とても良いことがあると気が付いた。 長太郎に好きだと伝えたら、太陽みたいに天真爛漫な笑顔も、好きと言うときだけに見せるあのとろけそうな微笑みも、両方自分のものになる。 おまえが全部、俺のものになる。 End. 前 次 Text | Top |