◇中学生*高校生 | ナノ



Your side effect 3

その日も部活後、宍戸さんといつものように一緒に帰った。
でもこの頃はこうして一緒にいるだけで、また昔みたいに先輩と後輩のような雰囲気しかなくなっていた。
俺がなにか迫らない限り何も起こらない。宍戸さんは付き合い始めてから何も変わっていない。告白した時に「俺も好きだ」と言ってくれたのが最初で、そして最後だった。

「長太郎。今日ヒマか?」
「え?はい」
「あ…なら、さ。その、うち寄ってくか」

一瞬、なにを言われたのか理解できなかった。
宍戸さんちに誘われたのなんて初めてだ。
しかも嫌われてるんじゃないかって落ち込んでいたときに。
どう見てもそわそわしている宍戸さんに、漠然とした期待をしてしまう。
俺は大きな声で「行きます!」と返事した。





* * *






「なんも用意してねーけど…」

そう前置いて通された宍戸さんの部屋は、宍戸さんらしくて、宍戸さんの匂いがした。
本棚にはテニス雑誌や少年漫画がきれいに並んでいて、でもたまにテストか何かのプリントが間からはみ出ているのが見えた。
勉強机には3年生の教科書と、一カ月分くらいありそうなプリントの山。その上に、たまに着けてくるリストバンドが無造作に置かれていた。
そして部屋を大きく陣取っているベット。足元のほうに布団が畳まれていて、剥き出しの薄いブルーのシーツに宍戸さんは背負っていたバックを放り投げた。

「なんか飲み物持ってくる」
「あ、お構いなく…」

つか、俺が飲みたい。そう笑って宍戸さんは階下へ降りて行った。
緊張しすぎて笑い返せなかったかもしれない。

一人きりになった部屋で、俺はつい何度も深呼吸してしまった。緊張してうまく呼吸できないし、それにこの部屋宍戸さんの匂いがするし(こんなとこ見られたら幻滅されそうだ)
ちょっと落ち着いたところで、宍戸さんはジュースを持って戻ってきた。

「母さんいなくてさ、とりあえずジュースしかないんだけど。悪いな」
「全然っすよ!俺、宍戸さんち来れただけでもう胸がいっぱいで」
「なんだよそれ。おまえって時々ヘンな感動するよなぁ」
「え、そうですか?」

宍戸さんは頷いてジュースを一口飲む。

「けどそういうヘンな感動できるからピアノうまく弾けたり、綺麗な絵描けるのかもな。……うわ、おまえ顔真っ赤」
「急に褒めるの反則ですよ〜」

口をとがらせると宍戸さんが突然手を伸ばしてきた。

「すんげーバカ正直」

そして宥めるように頭をポンと撫でて笑う。


……えっ?







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