Your side effect 2 そう思ったのは、部活終了後の二人っきりの部室にて。 陽も沈みかけて薄暗い室内はなんだか胸をそわそわさせる。 それに練習試合で連勝した宍戸さんは上機嫌だった。 直感が「チャンスは今だ!」と俺に叫ぶ。 「宍戸さん…」 緊張して、低く掠れた聞き取りづらい声になってしまった。 でも宍戸さんには聞こえたようで、笑顔のまま振り向いた。 「ん?」 ああ。 キスしたい、絶対したい。 前みたいに失敗したくない…! そのころ脳内では赤いサイレンと警報器の音でパニック状態だった。 エールを送る長太郎、恥ずかしがる長太郎、とっととやれと下品な野次を飛ばす長太郎、いろんな長太郎がわーわー言ってる。 でもとりあえず皆賛成らしい。身体が勝手に動いて、宍戸さんの両肩をガシッと掴んだ。宍戸さんの瞳孔が開いたような気がしたけど、もう俺は止まれなかった。 「宍戸さん…」 少し肩を押せば、宍戸さんはロッカーと俺に挟まれて身動きが取れなくなってしまった。もう逃げられない。やった!念願のキス…… 「うっ…!」 唇の距離、残すところ10センチ余り。 「しっ、宍戸さん!?どうしたんですか!?」 宍戸さんは車酔いした人のように口もとを押さえて床に崩れ落ちた。 吐きはしなかったけど、本当に顔色が真っ青だった。 びっくりした。 さっきまではあんなに元気だったのに…。 けどもうセカンドステップだなんだと言ってる場合じゃない。結局その時も「大丈夫だ」と言いつつも相当具合の悪そうな宍戸さんを介抱して、家に送り届けて、それで終わってしまったのだ。 また…タイミングが悪かったのかな…。 毎回落ち込んでもいられない。そう思ってみたけれど、部屋に誘えば頭痛を起こし、抱きしめようとすれば吐き気を訴える宍戸さんに、俺はなにがなんだかもう、わけがわからなくなってきていた。 仕方ない。 次はきっと。 そう思ってみても気分は晴れなかった。 だっていつもタイミングが良すぎる。 いつも俺が恋人っぽいことしたいなぁと思ったときにそうなるんだから。 どれも、全部、すごくショックだ。 どうしても拒否されたようにしか思えなくて。 悲しかった。 辛かった。 「ごめんな、長太郎」 そういうことがあるたびに宍戸さんは申し訳なさそうにこう言った。俺がどうしたいのか分かっているんだ。でもいっつもさせてくれない。 もしかすると、したくないのかもしれない。同情で後輩と付き合うことにしたけど、やっぱり男なんて気持ち悪かったのかもしれない。 そこまで考えてみたけど、やっぱり俺は宍戸さんが大好きだった。 前 次 Text | Top |