◇中学生*高校生 | ナノ



Your side effect 1

宍戸さんがよくわからない。

俺の憧れの宍戸さん。
俺の最も尊敬する宍戸さん。
俺の最愛の人、宍戸さん。

3か月と7日前、ようやく恋人という位置まで近づけた。なのに俺は今ひどく不安でたまらなかった。

試合の時は以心伝心できる宍戸さんが、コート外で何を考えているのかさっぱりわからないんだ。


もっとストレートに言うと。
言いたくないけど言うと。

俺のこと好きなのかな?という不安に襲われている。




奇跡的に宍戸さんと恋人同士になれたというのに、俺が今一つ幸福感に浸れない理由はちょっと引っかかることがあるから。
宍戸さんとはラブラブな…それなりにラブラブな毎日を過ごしてきた。それは心では実感してる。
けれど、そういうアクションはこれまで一切無かった。先輩と後輩という関係の時から何一つ発展していない。いまだ夢の中でしか宍戸さんを抱きしめたことが無いということだ。

いや、まるで無かったわけじゃないんだ。

付き合い始めてすぐの頃、“手を繋いで帰りたいな”って思ったことがある。

帰り道、辺りに誰もいないのを確認して、緊張で震える手で宍戸さんの手を取った。
勇気を出して一回り小さな手を包み込むと、少し低い位置にある肩がびくりと震えた。

あっ、そうか。
なにか言えば良かった。

緊張でそこまで頭が回らなかった。

「あの、し、宍戸さん…少しだけ…」
「……」

慌てて言って、手をぎゅっと握りしめた。やっと繋げたんだから、絶対離したくない。
そんなふうにしてお伺いをたててみたわけだけど、それに返事はなかった。

無言の時間が訪れ、甘い雰囲気はこれからなのか、ただ気まずいムードになってしまうのかも判断付かないうちに終わった。
終わったんだ。
強制終了。


宍戸さんが急に頭痛がすると言いだして、しまいに眩暈を起こして歩けなくなってしまったんだ。


本当に突然のことでびっくりした。部活のときはあんなに元気だったのに…。
けどもうファーストステップだなんだと言ってる場合じゃない。結局その時は具合の悪そうな宍戸さんを介抱して、家に送り届けて、それで終わってしまったのだ。本当に、一体どうしたんだろう?次の日は元気になっていたから安心したけれど。
…あれは、なんていうか…タイミングが悪かったとしか言いようがない。
しょうがないんだ、と思うことにした。

ちょっと落ち込みつつも、宍戸さんの笑顔に癒されて、何日かすると回復してきた。
むしろ元気になりすぎて、無性にキスがしたくなってしまった。





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