◇中学生*高校生 | ナノ



それぞれのカタチ

「宍戸さんって…もしかしてB型ですか?」
「そうだけど」

宍戸が答えた瞬間の鳳の感極まった顔、言葉じゃ表現しきれないぜ。
なんか始まったぜオイ、なんて、隣で着替えてた侑士と俺は目と目で通じ合った。

「やっぱりですか〜!どうしよう、運命みたい」
「なんの話だよ、長太郎」

怪訝そうな宍戸に、鳳は胸の前で手を握りしめ「実はぁ…」と恥じらうようにもったいぶる。残念だ。正直、それは女の子にしてほしい仕草だ。

「B型とO型って、めちゃくちゃ相性いいんですって!」
「……おまえってOなの?」
「はい。だから、俺達って相性抜群みたいですよ?」
「へえ〜」

宍戸は鳳の話に感心したようで(納得すんなよ!)なにか考え込んでいる。
鳳の奴、血液型で相性がどうのとか騒いで女かよ。なんか言ってやれよ、宍戸!激ダサだなって言ってやれよ!

ハッ!
そういえば俺もB型だった。
俺も鳳と相性抜群なのか?
うーん、なんか違う気がする…。

「確かに」

って、俺が考え事してるあいだに宍戸は結論に辿りついたようだった。

「長太郎とは性格も趣味も全然違うけど、こうして考えてみると…長太郎のいろんなもの案外受け入れられてるなって思う。血液型の相性はどうだか知らねえ。でも、俺達、合ってるのかもな」

にっこり微笑む宍戸。

「お、れも、そう思います…っ」

真っ赤に照れて、どもる鳳。

ああ嫌だ。
最近このパターン多い。多すぎ。
もうおまえらどっか二人の世界行け。

俺がうんざりしていると、侑士がにやにやしながら俺に耳打ちしてくる。

「な、な。いろんなもの受け入れてるって、なんかヤラシない?」
「…!へ、変態っ!変態クソ眼鏡!」

初めは俺と同じにうんざりしていたはずの侑士が、最近は下ネタにして面白がるからますます嫌になる。
つーか俺に言うなよそんなこと!知るかよ!……答えづらいんだよ!

「そんじゃ俺ら帰るわ。お疲れ」
「お疲れ様です」
「おう、ほななぁ」

俺達がヒソヒソやっているうちに相性抜群のバカップルは着替え終わって、部室を出て行く。
なのに侑士の話はまだ続く。

「…聞こえたらどうすんだよアホ」
「まずあっちが聞こえるんしゃあないやん。宍戸ってやっぱ下?」
「おっ…おまえはスグそーゆうふうにっ!」
「鳳も純情ぶって手ぇ早そ…あイタタ、ごめんて岳人」

別にホモがダメとかそういうんじゃないけど、そんなこと言われたって困るしかない。
だって宍戸はずっとダチやってきたヤツだし、なんていうか…反応しようがない。宍戸は幸せそうに見えるけど、それはいいことだけど…やっぱり素直に喜べない。
悶々と悩む俺を侑士は楽しんでいる節がある。
あーうざい!
しかもコイツ他のヤツには下ネタすら言わないのに、俺だけからかうんだぜ?

「もうそういうこと言うのやめろよ。ほっといてやれっつの!」
「えー。じゃあ今度エロ本持ってくるから、二人で見よ?」
「お・し・た・り・く・ん」
「あー、あいつら気になるわ…思春期宍戸に発情期鳳…」
「ったく…侑士が思春期じゃねーの」

あいつらもこんなの近くにいたらうざいよなぁ。
いちゃいちゃできねえよな(目の前でしてほしくないけど)
たまにだけど、俺はそんな二人が可哀想で、ときどき意識して侑士を遠ざけてやっている。つまりは今の状況とかな。
いや、二人が心配なことは心配なのよ俺も。

楽しそうな顔してたよな、宍戸のやつ…。
二人で寄り道して帰るのかなー。
手段はどうあれともかくラブラブするんだろうな。そんな顔してた、鳳が。
うげー。

考えて想像して、盛大に溜息を吐いた俺を侑士が小さく笑った。

「なに百面相しとんの」
「侑士のウザさについて考えてた」
「えー」
「氷帝の天才とか言ってるヤツらに今のおまえをみせてえわ」
「これ岳人専用の俺やねん」
「いらねー!」

乱暴にポロシャツやらハーフパンツやらを鞄に突っ込むと、侑士はまたにこにこ笑う。
話すのに夢中で全然着替え進んでないし。アホめ。

「なぁなぁ。岳人もB型だよな」
「そうだけど」
「宍戸と一緒や」
「俺も他のB型の女子も、宍戸がいる限り鳳とはこれ以上仲良くなれないと思うぜ」

なる気ねーけど。

「そうやなくて、」
「あ?」
「俺、A型なんやけど」
「…ふうん。ぽい」

そういえば、聞いたことなかったか。まぁ俺、誰が何型とか気になんないし。
興味薄な俺に、侑士は視線を合わせようと少し背を屈めて笑顔を見せる。

「俺ら相性抜群ちゃう?」

A型とB型。
よく、性格が違いすぎて合わないって聞く。

「………ああ。侑士は多分AOなんだ」
「ん?」
「父さんと母さんからAとO、半分ずつもらったんだ。だからあいつらほどイチャコラしねえけどダブルスは組めるんだよ、俺達」
「はは。なるほどなぁ。そうかもしらんなぁ」
「俺と鳳組んだらどうなるんだろ…」
「やめとき」
「だって俺だけダブルス専門だし」
「さみしいこと言うなや」

今日は部活でジャンプしまくった。
だからお腹空いた。

「なんかノド渇いたなぁ、岳人」
「うん」

久しぶりにマックでも行きてえな。

(…マックじゃなくて、マクドだっけ…)

だらだら着替えて、だらだらどうでもいい話して、どうせ侑士もまだ帰りたくねえんだろ?




End.





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