◇中学生*高校生 | ナノ



黒い芽生え

なんでこいつは恥ずかしがらないんだろう?
俺は、二人きりになると常に長太郎が気になって、神経ぴりぴりしてんのに。

「なんだか大人しいですね?」

後ろからいきなり顔をのぞきこまれ、心臓が跳ね上がる。

「えっ、う…いや、別にいつも通りだろっ。ち、長太郎が幸せだのなんだの言い過ぎだから、黙ってんだよ!」
「だって、二人きりの時しか言えないから。…それに、」

――ぞくり

刺激が背筋を走り、硬直した。
回されていた長太郎の腕が、ゆっくりと身体を滑っていく。

「恥ずかしがる宍戸さん見たいから…いえ、虐めたいからわざと言ってるんですよ」
「……………」
「あ。宍戸さんの顔、真っ赤で」
「ううううるせぇ!あかっ、赤くなってねえよ!もう黙ってろバカ!!」

必死に叫ぶと、膝に顔を隠すように埋めた。

――虐めたい…!?

何言ってんだ、長太郎!?
いや…後輩に「虐めたい」とか言われて反論しない俺こそどうなんだ。
……やばい。身体が震える。

やっぱり二人きりになった時の長太郎は、いつも通りだけど…どこかおかしい。
けど、そんな長太郎の言葉を真に受けて、妙な反応をしてしまう俺も相当おかしい。
こんな変な態度の俺に、いずれ長太郎も引くんじゃないだろうか。
自分でも気色悪いと思うし…。

「わっ」

最悪な想像に怯えていると、突然、強引に身体を起こされくるりと反転させられた。

「ちょ、長太郎、なんだよ」

動揺している姿をきっと笑われている、呆れられている――そう思いきや、真剣な顔が俺をじっと見つめていた。





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