密室の中の犬と人 「宍戸さん、ここおいで」 ベットを背に座る長太郎が足の間をトントンと叩く。 何となく広げた雑誌にあまり集中できていなかった俺は、犬のような誘い方に少々不満を感じながらも渋々とそれを承諾した。 俺と長太郎は少し前から付き合っている。 誰にも秘密の関係。 二人きりになるのは1週間ぶり。 何度もこうして過ごしたけれど、間隔が空くとなかなか慣れないもので…いまだに照れ臭い。 「…あっち向いて座ればいいのか」 「そうそう。後ろ向きでお願いします」 一方、長太郎は緊張感なんかまるでないようににこやか…いや、どことなくニヤニヤしている。 ――こんな顔見たら女子達は嫌がるだろうな。 そうマイナス評価しながらも、惚れた弱みかついドキドキしてしまうのだけど。 緊張しながらも長い脚の間に身を収めると、すぐに大きな身体がギュッと密着してくる。 「わぁっ」 「しばらくこのままですよ、宍戸さん。あぁ…すっごく幸せです…」 感慨深く呟いた長太郎は、俺の身体へ回した腕に力をこめる。 体温が一気に上がる。 じっとしてられない性格な上、普段先輩ぶってる相手と甘い空気……キ、キツい…。 「ち…ちょっと苦しぃんだけど」 「我慢して」 一週間分です、という長太郎に、簡単に言葉が詰まる。 こんな時の強引さに俺はまったく勝てなかった。 前 次 Text | Top |