彼が歪んだのはいつからだったか


憂はふと、そんな事を考えた。
節は今、自分の前に股を開いて座り込んで、己の下半身に憂の頭を押さえ付けようとしている。


ーー半年前、だったと思う。過去には人懐っこい笑みを見せていた節が、昏い表情しかしなくなったのは。

明るく社交的な節は誰からも好かれていた。友人も多かった。そんな友人のひとりに、節は、監禁、された。
その友人は異常な程、節に執着していた。それこそ嫉妬も独占欲も凄まじく、半年前のとある日、自宅の一室に節を閉じ込めたのだ。
監禁は一週間程だったが、解放された節は既に以前の彼ではなく、些細な事に怯え、他人にすぐ暴力を奮い、家に、引きこもるようになった。監禁されていた時に言われ続けていた「外に出るな」という言葉が彼を縛り付けているようだった。

節の体には、その時の傷がまだ、残っている。逃げられないようにと足首にはカッターでつけられた切り傷。逃げるならば殺すと脅された時に刺された下腹部。その二つは未だ、節の枷となり彼を解放してくれない。

憂は以前から節とは交流があり、節が病院で治療を受けていた頃に面倒を見ていたことがある。思えばその頃から、節はひとりになる事に酷く怯え、憂に「帰るな」と縋っていた。

退院後も節が一人で生活出来る状態ではなかった為に、憂は節を自宅に誘い、同居を始めた。

世話をして面倒を見て、節から与えられる暴力を受け入れているうちに、依存されていってーー

(何故、俺は逃げ出さないのか……)

憂は自分に問い掛けた。あれから自分も、酷く窶れた。
が、答えを考える暇もなく節に頭を押さえつけられ、憂は諦めたかのように一度目を閉じると、節の股間に顔を近付ける。そろりと目を開けると節のズボンのファスナーを歯でがちりと噛んで、そのまま顔を下げてファスナーを下ろしていく。

開いた箇所に口を近付け、れろれろと舌先で下着の上から既に膨らんでいる熱の塊を舐めれば、あっというまに厭らしいシミが出来た。

「指でケツ掘られて、男のモン銜えて、喜ぶんだな憂は」

「……」

憂は何も答えない。下着も口を使ってずり下ろし、直接節のモノを銜え込む。

「指じゃ足りないだろ、憂」

節は躰を屈ませると、ベッドの下から卑猥な玩具を取り出し、憂の後孔にその玩具の先端を擦り付けた。シリコンの柔らかい感触が伝わり、憂は嫌がるように腰をくねらせる。

「んんっ…」

「挿れてやるから、な?俺だけじゃなくてお前も気持ち良くなれよ」

硬く冷たい異物を捻じ込まれる感覚に、憂は弱々しく左右に首を振る。
根本までずっぼりと憂の後孔にアナルバイブが突き刺さると、節は感情のない瞳のままバイブのスイッチを入れた。

部屋の中に、厭らしい水音とバイブ音だけが響く。

「んっ…んふ…む…」

憂は後孔の振動に堪えながら、節の男根を口いっぱいに銜え込み、必死に舌を絡ませた。節の股の間に深く顔を埋め、ひくひくと喉を鳴らす。

節は憂の頭を片手で押さえ付けると、満足そうにその姿を見下す。後孔に突き刺さったアナルバイブがヴヴヴと激しく音を立てて憂の腸内を責め立て、憂を深い快楽の海に落とす。
憂の男根は既にゆるく頭を持ち上げていて、先端からは透明な液が漏れ出ていた。

「気持ちいいか?憂」

「んっ…ん…」

憂は返事をする代わりに、もどかしそうに太腿をすりっと擦り合わせた。両手を拘束された状態では、バイブを引き抜くことも自分の熱を扱う事も出来ない。口の動きを激しくさせて、節のモノを吸い上げる事しか、この焦れったい状況から解放される術がなかった。

「んっ、…可愛いな、憂」

節は漸く今日初めて笑うと、憂の前髪を優しく梳く。その優しげな手付きに、憂は奉仕しながら節の顔を見上げた。ほんの少しだけ安心してしまい、気が緩んだ瞬間、銜えた男根がびくびくと脈打つ。

「か、は…っ」

口に吐き出された精液が喉の奥を刺激し、思わず咳き込めば、再び熱く硬い肉棒を口に捩じ込まれる。

「んぐ…っ!?」

「全部呑めよ」

節は憂の顔を押さえつけると、口内にたっぷりと熱を流し込む。憂の喉が上下に動くのを確認するまで、手の力は緩めなかった。

「けほっ…あぁ…」

口内に広がる独特な匂いと味に顔をしかめ、節の手から解放されると憂は何度か咳き込んで、そのまま脱力し顔をシーツに埋めた。バイブを銜え込んでいる為高く上げた腰はがくがくと震え、自身の熱棒から滴る汁が太腿を伝い、憂の躰を濡らす。

「えっろ…」

節はそんな憂の姿を観察するようにじっと見つめると、バイブを焦らすようにのんびりと引き抜き、憂の反応を愉しむ。

「あっぁあ…あ…ふ…」

憂はくぐもった声で喘ぐと、後孔をひくひくと震わせた。休む暇なくひくつく後孔に逞しい節の男根が入り込むと、躰が大袈裟な程跳ね上がる。

「あっ、あぁっ、あっあ」

ばぢゅんばぢゅんと最初から激しく責め立てられ、憂は膝をがくがくと震わせて喘ぐ。玩具とは違い、熱を持った生物が自分の中で脈打ち、何度も行き来する度に膨れ上がって前立腺をごりごりと擦り上げるのが堪らなく気持ち良くて、憂は思わずシーツを口に含み、それを噛んで強制的に与えられる快楽に堪えた。

「ふぅ…っううぅう…っ」

「イイんだろ?憂。……我慢すんなよ」

「あ"っ、あっあぁぁあ!」

憂の弱い所である肋骨の浮く胸板と脇の下を撫でれば、憂の体がびくりと飛び跳ねた。節は憂の体を熟知している。ピストン運動に合わせて肋骨の骨と骨の間を指でなぞれば、憂はぞわぞわと鳥肌を立たせて喘いだ。

「きもち…ぃっ、気持ちイイ…っ…節…っ」

「憂…っ」

「あっあ"ぁあっ、ふかっ、深いぃ、ア"ッアッあ…ん!」

再奥で熱い飛沫が放たれる。憂の体は節の射精に合わせるかのように痙攣し、きゅうっと蕾が閉じて節の逞しい男根を強く締め付ける。

「ゆ、う…」

「あ、あぁぁあっ、ま、まだ駄目っ、あっあっあ…」

自分の中で熱を吐き出したばかりの筈の男根が直ぐに硬くなり、憂は涙声で動くなと訴える。が、節はその言葉を無視し、憂の膝裏を掬い上げて片脚を上げさせた。そして再び腰を激しく打ち付ける。
角度を変えての責め方に憂はただ喘ぐしかない。

「あっあっあぁあっ!ひっうぅう…!」

後ろを激しく責め立てられながら、すっかり腫れ上がった熱を握り込まれ、憂はぶわりと汗が全身に滲むのを感じた。

「くう…ぅ…っ」

熱へ直接刺激が与えられると、今まで溜め込んだ快楽の波が一気に押し寄せて、上下に緩く擦られるだけで弾けてしまいそうになる。

「あ…、やめ…、やめ…っ」

ぐちゃぐちゃに後ろを掻き回され、膨れ上がった性器を擦られ、憂は軽く意識が飛びそうになりやめてくれと涙ながらに訴える。
だが責め立てる動きが止まる筈もなく、ぷくりと雫を作る先端の割れ目に爪を立てられ、憂の全身に痺れるような強烈な快感が駆け抜けた。

「ひぁぁああ…っ!!」

びゅくん…っと憂の自身から熱が放たれる。憂の腹は精で汚れ、全身は絶頂の余韻でぴくぴくと震えていた。

「ん…っ、憂…」

「ひ…!?」

絶頂を迎えたばかりで敏感な体を、貪る手が止まらない。
節は憂の腰を引き寄せると、奥にがつがつと自身の熱を突き立て、憂の体を揺らした。

「ひぁっ、あぁあっあうあぁ…」

「腹千切れるまで俺のを注ぎ込んでやるからな」

節は憂を責め立てながら、憂の腹を撫で回す。この中で自身の熱が蠢いてるのだと思うと、自然と口角が吊り上がった。

「孕んでくれりゃ万々歳なんだけど」

妖しい笑みを浮かべ、節は憂の耳元に口を近付ける。

「そうしたら…俺だけのものだろ?…憂……ゆう、離れたくない、離れたくないんだ、怖いんだ…」

「ぶ、し……」

「俺をひとりにしないでくれ、憂」

再び腸内に熱い熱を注がれ、憂は意識が霞むのを感じた。
だが気絶するのも許されないだろう。殴られるか水をかけられるかして、強制的に覚醒させられるだろう。

ひとりにしないとは、そういうことだ。





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