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「また姉ちゃんと一緒に俺等んとこ遊びに来なよ、西峨もいるしね」
「さいが?」
「ん? ちょーもー西峨ぁ自己紹介ぐらいしなさいよー」

 額を突いてこようとした桐原の人差し指を西峨は払い落した。
 ぷいとそっぽを向いたまま黙り込んで何も喋ろうとしない。
 
 捻くれたその態度に桐原は苦笑し香苗に向き直った。
 
「コイツが西峨ね、こんなだけどまた会いに来てやってよ」

 香苗は西峨の方を見て何か言いかけたが、結局は無言で頷いただけだった。
 
「そーんじゃねー」

 西峨の首に腕を回して無理やり引きずりながら桐原は去って行った。
 
「あーやっと一難去った……」

 紗衣は緊張で硬くなった肩をぐるぐる回す。
 
 わたし達もそろそろ帰ろう、と香苗の方を見れば。
 
「かーわいぃー!」

 倖に力いっぱい抱き着かれてぐったりしていた。
 
「その辺にしてやれ倖、お前この間全く同じ手法で猫あの世に送りかけたの忘れたか」
「倖ちゃん無駄な抵抗はやめて大人しくその手を放しなさい!」

 奪い取るように香苗を倖から離す。
 
「おい! これ一人じゃ運べねぇよお前等手伝え!」

 未だ気絶したままの南の不良を蹴りつける山野井を全員が一瞥。
 
「さって帰りましょうか」
「あ、もうすぐ月9始まる」
「木曜だけどな」
「お姉ちゃんお腹空いた」
「作るの面倒だわね、何か買おうか」

 見事なまでに無視を決め込む。
 
 が
 
「テメェ等いい加減にしろよ? 遊んだ後は後片付けしましょうねって小さい頃教わっただろボケ」

 素早い動作で和真と大和を捕まえると、こめかみに血管を浮きあがらせながらニッコリと笑う。
 
「お、お疲れっしたーっ!」

 和真と大和を生贄に残りの紗衣達は見切りをつけて風の如き速さで逃亡に成功。
 倖とも別れ、自宅に戻れば、短時間の間に色々な事があり過ぎたせいか、恐怖が許容量を振りきれて一種の興奮状態に陥ってしまったのか。
 
 香苗はきらきらしい瞳で紗衣を見上げてくる。
 
「お姉ちゃんすごいね! いっつもあんな人達と一緒にいるんだ」

 びっくりしちゃった、と笑う香苗に一抹の不安を覚えた。
 怖がるのなら分かるが、尊敬される事ではない。
 
 これは危険だ。
 
「かな」
「またお兄ちゃんに会いたいなぁ」

 紗衣に頼んでいるというよりも、独り言の呟き。
 そのまま横を素通りして家に入っていく香苗に何も言えなくなった。
 
「と、取り返しつかない事やりやがったな南のヤローーッ!!」

 妹の将来の軌道が大きく変わってしまった一日となった。
 
 

end
'11.05.10^'11.10.21



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