南のリーダー格が屯(たむろ)しているのは公園だ。
 
 暑いし寒いし雨風はしのげないし、何で好んでこんな野外に集まるのかと呆れたのは何時の話だったか。
 
 けれど今、紗衣達が呆気にとられているのはもちろん場所のせいなどではない。
 
 十人程度の男がばらばらと地面にへばり付いたまま動かない。
 完全に気を失っているようだ。
 
 椿が試しに一人を蹴って転がしてみるも起きる様子はない。
 環はどこかつまらなさそうに辺りを見渡している。
 
「どうなってんの」

 思わず呟いたのは紗衣だ。
 それでもすぐに我に返り妹の姿を探した。
 
「香苗!?」
「にゃあぁ!!」

 紗衣の呼びかけに答えるように奇声が発せられた。
 発生源ははすぐに特定できた。
 
 すべり台の後ろから半分転げながら少女が出てきた。紗衣そっくりの。
 
「お、おね、お姉ちゃぁんっ!」
「いやあんたさっきニャアって」
「お姉ちゃん!!」
「ニャアてあんた」

 相当引っかかったらしく、泣きじゃくる妹が抱き着いてきてもさっきの奇妙な声を蒸し返し続ける。
 
「紗衣、これどうする」

 気配を消していたはずの環が静かに問う。
 
 これってどれ?
 
 言葉ではどうであれ、妹が心配で堪らなかったわけだから、紗衣は力いっぱい香苗を抱き返しながら顔だけ環の方へ向けた。
 
 最初は屍と化している南の奴等の事かと思ったのだが。
 
「どうするもこうするも、何をどうすりゃそうなった!?」

 環は今、幼さを残す少年を俯せに寝かせてその背中に乗って押さえつけていた。
 
 噛み殺しそうな勢いで睨みつけてくる西峨をものともしない。
 
「ああぁお兄ちゃん!」
「おや何時の間に紗衣に弟が出来たんでしょうね」
「わたしも初耳なんですが。おかしいなあんな恐ろしく綺麗な顔した弟がいた覚えないんだけど」

 環の方へ駆けて行った香苗の背中を眺める。
 
「たまきさんダメだよ、どいてどいて!」

 非力な手で必死に環の袖を引っ張って退かす。
 環はちらりと紗衣を窺ってから渋々西峨を解放した。
 
 身体が自由になったら即座に西峨は跳ね起き、環に拳を振るった。
 
 バシィッ――
 
 だが軽くいなされ、逆に腕を掴まれて投げられてしまった。
 
「マンガみたいだ!」

 頭を抱えながら叫んだのは香苗だ。
 混乱しきって無意識化での発言に、椿は「さすが紗衣の妹」と吹き出す。
 
「お兄ちゃんはセイギだよ! 私を助けてくれたんだから」

 精一杯環に乱暴な真似をしないでと頼んだ。
 環にしてみたら正当防衛なのだが、反論はせずコクリと頷く。
 


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