「あれ、香苗!?」

 急に声を掛けられて顔を上げると、驚いた表情をする女の子3人がいた。
 
「わーホントだ香苗だ! 久しぶりじゃん、てか帰って来てたんなら連絡ちょうだいよ!」
「久しぶり、ごめん今日帰ってきたばっかなんだ」

 中学のときの友達だった。
 3人はもう店を出るところのようだ。
 
 彼女達の視線が私から外れて稔の方へ行く。
 まずい! ロックオンされた!
 
「えっと、彼は高校の」
「カレシ!?」

 は!? えっと、えーっと……
 景色から目を離して私と友達を交互に見る稔に目配せする。絶対通じてないけど。
 
「ウン、カレシ」

 やべぇカタコトになった。
 稔も目を真ん丸にした。
 黙ってて! 文句はあとでたっぷり聞くから今は何も言わないでお願い!
 
「マジで!? 香苗に彼氏、しかもイケメン!」
「聞いてないし! いつからよ!? 色々問い質したいけど、時間ないわ……」

 おめかしして、何気に化粧までしてる。
 今から合コンかねお嬢さん方。
 私にとったら好都合だけどもね。

「今度詳しく聞かせなさいよ!」

 という捨て台詞を残して彼女達は去って行った。
 私に幾つもの難題を残して。
 
 一つ目は、固まっている稔だ。

「稔、ごめんね?」

 先手必勝。何か言われる前に謝ってしまえ。
 手を合わせて拝むようにする。
 ポイントは目を外さない事らしい。
 誠意を見せるためとかなんとか、姉から聞いた話なのでどこまで信じていいかは分らないけど。
 
 稔は片手で顔を覆って
 
「別に、いいけど」

 と蚊の鳴く様な声で言った。一応許してくれるのかしら。
 
 そんなタイミングで2人の注文した品が到着。
 わーい、ドリアー。トッピングに半熟たまごー。
 
 しかし熱くてすぐには食べられないので、冷ます間にちょっと言い訳。
 
「あのね、嘘ついたのは稔を守る為だったんだよ。ああでも言わないと、あの子達絶対に稔に言い寄るから。最悪血で血を洗う争奪戦になりかねない」
「お前の友達なのにか」
「友達だからでしょー。私を介して仲良くなろう作戦。常套手段っしょ」

 あ、すごい嫌そうな顔した。
 女の子のしたたかなところがダメなのか?
 でも男の子も同じじゃないかな。
 友達の友達って言ったら、何となく親しみ易いよね。
 
 稔ったら難しいお年頃。
 
「堂島は良かったのか? 今度色々聞くって言ってただろ」
「ああ、大丈夫大丈夫。適当に誤魔化して頃合い見て別れたって言うから。さすがに元彼紹介しろとはせっついてこないでしょ」

 稔の眉間のしわが大変な事に!
 
 そんな、離婚してバツがつくわけでもあるまいし、気にすることないのに。
 イケメンって大変だなぁとちょっと同情したくらいだよ。
 
 ショカさんくらいに、上手な女の子のあしらい方をレクチャーしてもらった方がいいかもしれないな。
 あの人はスマートよ。
 
「それに男前稔を彼氏ですって紹介できたなんて役得だしね! やったよ私の人生にハクがついた!」

 ところでハクってなんだろうね、漢字でどうやって書くんだろう。
 
 よし、そろそろ冷めただろう。食うぞ。
 
 と思ったけどまだ熱かった。舌火傷した。
 水を飲んでひりひりする口の中を冷却していると稔が嫌そうな顔をしていた。
 どうした。
 



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