みんなにどのケーキがいいか選んでもらおうと箱ごと持って行ったのが失敗だった。
 
 箱を開けたら中に姉からの手紙が入っていた。
 
 「香苗へ イケてるメンズとホームパーティを楽しんじゃいなYO☆」
 
 文章はその一行だけ。ツッコミ所はあれどこれはまあいい。許容範囲だ。
 しかしその下の絵がいただけなかった。
 悪ふざけとしか思えない、玉虫に髪の毛生えましたみたいな顔の子の絵が描かれていた。
 目鼻口のパーツは、平安美人? っていうようなすっとした感じだし、うん、怖い。
 まるで生気が感じられない。
 
 しかも吹き出があって「YOU,やっちゃいなYO☆」って台詞つき。
 
 お姉ちゃん!? どうしちゃったの、何この残念クオリティ!?
 これわざと!? わざと下手に描いたの、むしろこんだけ気持ち悪く描けるの才能だよ!!
 
 これ見た瞬間に時芽と基が大爆笑して、おさまりかけた所にもう1回見て再発。
 を3回くらい繰り返して、いまやソファからずり落ちてカーペットの上に蹲ってる状態だ。
 
「か、かなちゃ!」
「カナ、カナくんが……!」
「オレじゃないもん!!」

 そうなのだ。この絵の下に馬鹿丁寧に「香苗」と書かれていたのだ。
 この絵の主はなんと私らしい。
 
 お姉ちゃんから見た私ってこんななの!?
 
「もう! 稔から何か言ってやってよこの二人ヒドい!」

 基と時芽は向かい。稔は私の隣に座っている。
 2人が腹抱えて大笑いしている間、稔はずっと黙ってたから気付かなかった。
 彼は私に背を向ける様に身体を捩って、クッションに顔をうずめていた。
 肩がひくひくしてる。
 
 お前もかい!!
 
 すごいよお姉ちゃん、お姉ちゃんの画力は全員の腹筋を崩壊させたよやったね!
 
「あらあらどうしたの? さっきからすごい笑い声が聞こえてたけど」

 仕事の電話が掛かってきたらしく席を外してた母がやってきた。
 姉の手紙を見せると「似てるわね」と言いましたこの人。
 姉の芸術センスは母譲りらしい。
 
 その発言に3人またも撃沈。
 ちくしょう、グレてやる。
 
「で、お母さんはどのケーキにする?」
「私はいいわ、すぐ仕事戻るから」

 最初から挨拶だけのつもりだったのよ、と。そうなんですか。
 わざわざ仕事抜けてきてくれたのか、ちょっと悪い事したなぁっていつもなら思うだろうけど、今の私はそんな風に考えられるほど心に余裕ない。
 
 もう二度と姉に絵は描かすまい。
 


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