暮れる日の来訪者



 ただいま我が家!
 
 というわけで今日から冬休みの為実家に帰省。
 約束通り時芽の家の車で時芽と基と稔と私、いつもの4人組で帰宅。
 
 ちなみに途中まで依澄も乗せてもらってたんだけど、さっき家の近くで降ろしたところだ。
 
 ううん、なんか色々ともう怖い。何も起こらないわけがない。
 
 何故なら今家には母がいるらしいので。
 
 だああ絶対ロクな事にならない、あの人の事だから嬉々として私の恥ずかしい過去話暴露大会とかしちゃうんだ!
 諸事情によりアルバム出せないのがせめてもの救い。
 
 夏休み、私がいない隙に姉が稔と幼少期からのアルバム鑑賞してて絶叫したもの。
 公開処刑以外の何物でもなかったよ!
 
 こんな緊張しながら自分ちのチャイム押すの初めてだわ。
 
「ただいまー、友達連れてきたよー」

 事前に稔がホームステイする事と、基達が遊びに来る事は母親に連絡していた。
 だから家にいるんだろう。
 私が普段どんな子達と一緒にいるのか見定めようとしてるんだろう。
 
 恐ろしい母親です。
 
 おじゃましまーす、と次々みんな入って来るのと、台所の方から母が出てくるのが同時だった。
 
「お帰り香苗、みんなもいらっしゃい、どうぞゆっくりしていってね」

 にっこりと微笑んで出迎えた母は「優しくていいお母さん」風だ。
 実際いいお母さんだと私は思っているけれど。
 
 しっているか、かのじょのえがおはゆうりょうだ
 
 ここで笑顔が出たという事は、3人は合格だったんだろう。
 何に試されて何に合格したのか私には解らないよ。
 
「みんなは居間にいてもらいなさい。お姉ちゃんがケーキ買ってくれてるから香苗は準備して」
「はぁーい」

 おお! なんと用意のいいお姉様!
 勝手を知っている稔に居間へ案内してもらって私は台所へ直行。
 
 早速紅茶の用意だ!
 
 うきうきとお湯を沸かしていると、後から入ってきた母もなんか機嫌が良い様子。
 
「さっきちらっと見たんだけど、あの乗ってきた車、誰の家のなの?」
「見てたの? さすがだね。時芽んちのだよ」
「ときめ?」
「一番背高くて、目が細い」
「ああ……」

 顎に手を置いてにやりと笑った。怖い、怖いよ。たまに姉もそういう表情するんだ。
 大抵黒い事考えてるときに!
 
「あんま友達に品定めみたいな事するのやめてね?」
「あら。お友達ならとやかく言わないわよ」
「なにそれ」
「あんな高級外車、しかも運転手つきで送り迎えしてくれるご実家をお持ちの男の子が香苗とお付き合いしてくれたらいいのになぁってだけ」

 黒すぎる! このまっくろくろすけが!
 
 そんな目で時芽達を見てたのか……。
 ていうかお付き合いって。私男の子って事になってるんだから、そういう展開にはならないよ。
 十分その事は分ってるだろうに。
 玉の輿だなんだと、そういや最初からずっと言ってたなぁ。
 
「ほら準備出来たから持ってくけど、お母さんも来る?」
「もちのろん」
「さいですか」

 この人の語彙力ってどうなってんだろうってたまに思うわ。
 
 そんでもって、こっちに来たものの一切手伝わなかったよね。
 自分で建てた家なのに、仕事ばっかであんま居ないもんだから未だに勝手が分らないのだそうだ。
 
 稔以下になっちゃってるよそれ!
 
 


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