▼3 一目散に堂島のもとへ駆け寄ると、あやすように抱きしめた。 「大丈夫、もう大丈夫だよ。怖くないから」 そう言ってやると目に見えて堂島の身体から力が抜けた。 安心しきった顔で平良に話し掛けている。 俺は、何しに来たんだろう。 最初から平良だけで良かったんじゃないか。 なんでこんな惨めなんだ。 自然と拳を作る力が強くなる。爪が食い込んで痛い。 もうこのまま気づかれないうちに先に戻っていようか。 二人をこれ以上見たくなかった。 でも気付いてほしいとも思った。俺だっているんだ。 平良じゃなくて俺を―― そう思った瞬間、心臓がドクリとなった気がした。 「あっれ稔!? 稔も来てくれてたの!? うわぁすごい嬉しい!」 心臓が脈打ったのと堂島が俺に気付いたのが同時だった。 もう堂島はいつも通りの表情に戻っていた。戻したのは平良。 それでも、嬉しいと言ってくれた。 俺が探しに来た事を。 その一言で少し気持ちが浮上して、そんな現金な自分に苦笑した。 堂島の態度に一喜一憂してるのが、なんか無性に腹立たしくもある。 俺の内心なんか知った事じゃない堂島がへらへら笑ってるから、ちょっと馬鹿らしくなった。 苦笑しながら「大丈夫か?」と聞けばやっぱり馬鹿な答えが返って来るし。 良かった。いつも通りだ。元気な堂島だ。 普通に歩けるみたいだし本当に大事にならなくて良かった。 けど、あちこち打ったらしいし、擦り傷も多そうだ。 服は泥だらけで擦り切れてるのが痛々しく映る。 自己嫌悪。俺がちゃんと手を、掴んでたら。 「かたミンのそういうとこ、カッコいいと思うけどあんま良くないよぅ?」 そういうとこ。 堂島はよく言う。俺は世話焼きで友情に篤い、優しい。 そんなんじゃない。 俺の中学時代を知る沖汐が聞いたら腹抱えて笑う。 堂島に対する態度を見たら。 そうだ、こんな風に心配したり必死になるのって、堂島にだけだ。 ずっと堂島の評価が大袈裟なんだと思ってた。ちょっとを大にする奴だから。 でもそれだけじゃなかった。 よくよく考えてみたら、自分でも何でだ? って思うくらい構ってるって今頃気付いた。 宙ぶらりんに心の中でぶら下がってた色んな感情が昇華されていく。 ああ、俺、堂島が好きなのか。 なんでか凝視してくる堂島とバチッと目があった。 急に顔に熱が溜まるのが分かった。 自覚した途端これだ、勘弁してくれ。 end '13.7.19^13.8.11 前 | 次 戻 |