結構迂回させられたけど、内海が教えてくれた道から下に降りる事が出来た。
 膝くらいまである草が鬱陶しいけどかき分けながら進む。
 
「思ったより高さないね、これならカナも大丈夫だよ」

 ニコリと平良が笑った。こいつが言ったら本当に大丈夫なような気がしてくるから不思議だ。

「方波見くんも一緒に探しに来てくれるなんて、カナきっと大喜びだね」

 状況にそぐわないこのふわふわ感がなぁ。
 胡散臭いというか。
 胡乱な目で見ているのがバレたのか、平良が目を丸くした。

「嘘じゃないよ、カナ喜ぶよ」

 違った、全然バレてなかった。
 別にそこを疑ったわけじゃない。
 堂島ならきっと喜ぶだろう、来るのが俺じゃなくたって。
 折笠達であっても、平良一人だけでも、あいつなら大袈裟に感謝しそうだ。
 
「最近カナね、ずっと方波見くんの話ばっかりするんだよ。ちょっとやきもち焼いちゃった」

 照れもせずやきもちとか素で言った奴初めてだ。ていうかこいつくらいのもんじゃないのか。
 
 あんまサラッと言うもんだから聞き流しそうになった。
 
 しかも平良が妬く必要なんかどこにもないのに、何言ってんだコイツ。
 俺達はそういうんじゃない。
 
 むしろ。……むしろ?
 
「一番ネタが多いってだけだろ」
「それだけいつも一緒にいるって事でしょ?」
「同室だからな。でもお前の方がよっぽど仲良いじゃないか」

 お互いの事をよく理解して。
 
 平良は嬉しそうに頬を緩めた。分りやすい奴。
 本当に好きなんだな、堂島の事。
 堂島もそうだろ、お前の事大好きじゃないか。

 自分で言って胸やけしそうになった。大好きって……。
 
 無意識に寄った眉間のしわを伸ばすように押さえた。
 
 でも、いっつも「依澄んとこ行ってくる!」ってよく部屋に遊びに行く時の堂島の嬉しそうな顔を見れば一目瞭然だ。
 
 俺にはあんな風に気を許してない。
 折笠達も、西峨や高鳥だってきっと平良には敵わない。
 
 額に手を当てるのも、手を繋ぐのも当然のようにやって、受け入れて。

 俺がやったらどうだった?
 ふざけて触れる事はよくある。相手の反応を見て揄う悪戯で。
 あの後堂島が俺の手を握ってきたのは、俺が嫌がったからだ。面白がってただけだ。
 
 平良とは全然違う。その事に苛立つのはなんでだ?
 結局俺じゃなく平良に頼るのかって思ってた。
 
 だけど堂島が平良を選んでたのは正解だったのかもしれない。
 堂島が足を踏み外して落ちた時、手を伸ばしたのが俺じゃなく平良だったら、ちゃんと掴んでやれてたんじゃないのか。
 
 あいつは助かってたんじゃないか。
 
 想像したら自分の不甲斐なくて後悔したけど、それ以上に平良に対して抱いたこの感情はなんだ?
 
 一度考え出したら、次から次へと平良へのよく分からない八つ当たりみたいな気持ちがわいていた。

 振り払う為に頭を振った。
 
 なのに平良は
 
「方波見くんは焼かない? やきもち」

 更なる爆弾を投下した。
 
「はぁ?」
 
 ガサガサッ
 
「ぎゃーっ!」

 枝がしな垂れて邪魔になってるのを手で退けると、怯えきった悲鳴が聞こえた。
 よく聞き覚えのある声の。
 
 先に反応したのはやっぱり平良だった。
 



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