いっつも俺は踊らされてんじゃないかと思う。
 
 ニコニコ笑ってる堂島と、ふわふわ浮いてるような平良に。
 この二人は相性がいい。迷惑なまでに。
 
 平良は、苦手だ。
 悪い奴じゃないんだろうとは思うけど、何を考えてるのか分らない掴みどころの無さが不信感につながる。
 
 堂島はよく、困ったら助けてとか、俺の事を面倒見がいいとか言うけど、実際あいつが本当に助けを必要としてるときに呼ぶのは平良だ。
 
 幼馴染とはいっても、一緒にいたのは3年くらいのものらしい。
 でもお互いの事を知り尽くしてるって見てて分かる。
 
 何となく面白くないのは、この学校で俺が一番仲が良い友達だと思ってるのが堂島だからだろう。
 堂島が一番に選ぶのは俺じゃなくて平良だから。
 
 中学の時につるんでた沖汐とは全然キャラも何もかも違うけど、同じようにずっと一緒にいても苦にならない。
 
 女だと知っても距離を置こうと思わなかったのは、堂島といるときの騒がしいのに穏やかな独特の雰囲気が心地よかったからだ。
 
 性別なんて意識しない。してないしされてない。
 有り得ないって思われるかもしれないけど、本当にそうだった。
 
 堂島が意味不明な絶叫と共に崖から落ちた時。
 不甲斐なくも俺が堂島の手を取ってやれなかった後、すべてが覆った。
 
 
 狭い道に出来る人だかり、大半の奴が呆然としていた。
 俺も自分の手を見ながら暫く立ち尽くしていたけど、そんな中一番早く立ち直ったのが平良だった。
 
「高盛くん! 先生呼んできて!」
「え!?」

 俺と同じように固まっていた高盛が弾かれたように平良を見る。
 平良は高盛の肩に手を置いて、言い聞かせるようにゆっくりと喋った。
 
「ちゃんと先生に状況を説明して、連れてきて。出来るよね?」
 
 高盛は思いつめた表情で頷いて一番先頭を歩いている教師の方へと駆けだした。
 
「僕はカナを探しに行くけど、方波見くんはどうする?」

 こいつはこんな顔もするのか。
 珍しく笑みを引っ込めた平良は、いつもの温和な雰囲気を一変させ、作り物の人形のようだった。
 
 綺麗なだけに真っ直ぐ目を覗き込まれると少し怖いくらいだ。
 俺は唾をのみ込んでから「行く」と答えた。
 
「す、少し戻ったところに、脇に逸れる道があったから、そっからなら降りれると思う」

 状況について行けてなかったのかずっと黙っていた内海が後方を指さした。
 
「ありがとう」

 平良はすぐに走り出す。

「折笠と秋月って分かるか? 俺等とよく一緒にいる。アイツ等がいたらこの事教えてやってくれ」

 自分達が離れてた間に堂島が大変な事になって、それを知らないままなのは、あいつ等は嫌だと思うだろうから。
 
 内海が頷くのを確認して、随分と先に行ってしまった平良に追いつく為に俺も走った。
 
 


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