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 大浴場って良い響きだよね。かぽーんって鳴ってる感じだよね。あれって何が鳴ってるの?
 しかしまぁなんですわ。

 とっても淋しい……!
 
 
 浴場を使うにあたってまずは先生方の許可を貰わねばなるまいという事で、教師控室もとい休憩室に足を運んだ私と稔は見てしまった。
 テーブルの上のみならず床にまで散乱している缶ビールと酎ハイの缶とおつまみの数々。
 男性陣は現在見回り中らしく、女性の先生しかいなかったんだけど、ノックの直後返事も聞かずにドアを開けた私と先生達のあのお互いに気まずい空気ったらない。
 
 見られちまった……! 見ちまった……! と固まる事数秒。
 
「あ、あら堂島くん、どうしたの?」
 
 一番に我に返ったのは保健の先生だった。
 やっぱりお風呂入りたいと伝えれば快く鍵を貸してくれた。
 そしてここでやっと私の後ろに稔が居る事に気付いた若い二人の先生が「ぎゃ!」と小さく悲鳴を上げたのを私は聞き逃しませんでした。
 そしてとても今更なのに、自分の周りにあったお酒とさきいかを遠くへ追いやって、私ま知りません? みたいな素振りをしてみせた。
 お酒のせいなのか別の原因なのか頬を赤らめて「ふふふ」と誤魔化し笑いしちゃってるけど、何も誤魔化せてないよ先生。
 
 しかしあれだね、普段学校だと分らないけど、やっぱまだ若い女の先生にしたらイケメンの稔の存在は美味しいんだね。
 多分私のお姉ちゃんとこの人達歳あんま変わんないんだよ、それもそうか。
 
 教師と生徒の禁断の愛……嫌いじゃないよ!
 
「方波見くんは……何か用事でもあった?」
「いいえ、稔は付き添いです」
 
 はぁ、付き添い。え、なんの? とぽかんとする皆さんに時芽がどんだけ恐ろしい肝試しをしてくれたかを力説する。稔と二人がかりで。
 最終的にはなんだかぬるま湯のような穏やかな目で見つめられる羽目になりました。
 
「うん、怖いのは分かったけど、大浴場はこの通路突き当り右に曲がってすぐだから堂島くん一人で行きなさいね」

 とか無情な事を仰るので高速で首を振って稔の腕にしがみつく。
 ムリムリムリ! 出るもの絶対に半透明なの出るもの!
 
「でもどうせ一人でお風呂入るでしょ」
「ああ……! そこまで考えてなかった! よし稔やっぱり一緒に」
「ど、堂島くん!?」

 稔のツッコミより前に先生の焦った声が乱入。
 三人の先生が全員焦っている。酒盛りしてたのがバレたのと同じくらい焦り顔になっている。
 
「俺はもう入ったっての。男と二人で湯船使って語る趣味ねぇよ」
「えー親睦とは浴槽で深め合うものなのにー。背中を流し合ってこそ心の壁まで流れ落ちるんだよ稔は分って無い!」

 稔が私が女だって気づいてませんよアピールをしてくれたお陰で、先生達があからさまにホッしたのが分かった。
 ふむふむ、やっぱり女だってバレてるってのがバレたら拙いわけだな。さすが稔ナイスフォロー!
 
 ああじゃあ仕方ないね。稔ここで待っててよ。と言い残して私はすたこらさっさと浴場へと走った。
 ゆっくり歩いて行く勇気私にはなかったからね。
 女の先生三人の中に取り残された稔がすっごい情けない顔したのは私の胸にしまっておいてあげるよ、うぷぷぷ!
 
 
 そして広い浴場のドアをガラガラガラと開けた私は絶望した。
 お湯が抜かれている……! ショックのあまり膝を突きそうになった。
 こんな見事に大きな、鹿も一人だから泳ぎたい放題の浴槽があるのに、使えない、だと!?
 シャワーで済ませろというのか日本人ならお湯につからないでどうする!
 傷はしみるだろうけど、それを「くぅ」と我慢するのも楽しみだったのに! 別に私はマゾじゃないよ!
 
 やさぐれた私は足の指の間までしっかり丁寧に身体を洗い上げ、えぇいこの際だと、ついでにマッサージまでしちゃったりなんかして。
 あがった後はドライヤーで髪の根元までしっかりと乾かし、櫛で丁寧に整え。
 
 つるっつるボディにさせていただきました。ありがとうございます。
 これも全て稔がいてこそ。この綺麗になった私を稔に、あげたりしませんけれど!
 
 


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