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「ねぇこの子どうしたの?」

 つんつん、と時芽が小枝の先で稔の頭をつつく。
 
 いつもなら小枝を真っ二つに圧し折って怒るだろう稔だけど、今はそれどころじゃない。
 というか、魂が抜けきっていて全く何されても気付かないような状態だ。

「かたミーだいじょーび?」

 稔は眉間を人差し指でぐいーっと押す基に対しても何の反応も示さない。
 
 重症だ。
 
 そこまで……? と思うけど、稔にとっては強烈だったんだろう。
 
 ついさっき、教室に戻ろうとしていた私と稔はついに出会ってしまったのだ。
 依澄の想い人であるお姉様に!
 
 いやぁすごかった。お姉様は全力で稔を愛でたのなんのって。
 稔が固まって動けないのを良い事に、あの人はとことんまで堪能してたね。
 最後は私に、お持ち帰りしていいかと聞いてきたくらいに。
 
 あの調子だと、私がナチュラルにこの学校の制服着て男の子に扮している事にも気づいてないだろう。
 
 私と会話しつつも彼女の目には稔しか映ってなかった。
 素敵だ、本当にマイウェイを常に最高速度で走り抜けているお姉様が私は大好きだ。
 
 そしてなんか色々と稔から吸い取ったのか艶やかな表情で去って行ったお姉様。
 残されたのは放心してしまった稔。
 
 それからというもの、ずっとこのまんまです。
 
 役得だと思えばいいのに、どうしてこんな憔悴してしまうのか。
 あんな美人に弄ばれるなら、それも男の本望じゃないのか。
 
 まったく真面目さんなんだから。
 
「稔大丈夫だよ、もうお姉様は帰ったよ」
「!」

 はっ、と我に返った。
 おかえり。
 
「お姉様? なにかたミーってばSMプレイでもしてたの?」
「それは女王様だよ基」

 お姉様は確かに性格的には女王様でもあるけどね。
 
「……堂島の周りはあんなのばっかかよ……」

 なんか最近そういう台詞よく聞く気がするけど、私のせいじゃないかんね!?
 むしろ私もそれはとても疑問なんだからね!?
 
 私の周りキャラ濃すぎる。
 
「でもいい人なんだよ、お姉様は」

 小学生の頃、私も依澄も鍵っ子で一人家にいるのが嫌で時間を持て余していた。
 当時中学生だったお姉様は「仕方ないわね、ほらガキ共私が遊んであげるわよ」って言ってよく相手してくれたものだ。
 
 近所の面倒見のいいお姉さん。高校生になった依澄の文化祭に遊びに来てくれるんだから、それは今でもそうなんだろう。
 
「なんかよう分らんけど、おれも見たかったなぁ女王様」
「お姉様だってば」
「僕も見たかったなぁSM」
「してねぇよ!!」

 なんだか時芽と基のお姉様のイメージがとんでもない事になってるけど、まぁ実際会う機会は一度もないだろうからいいか。



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