Episode.02-1

春の訪れは暖かい日差しと気持ちの良い風を運んでくる。
周りを包み込むように、俺も二人の友人を見守ろうと改めて思う季節。



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 春は、世界を色鮮やかに見せる季節な気がする。こんな俺でもそんなことを思うんだから、四季っていうものはすごいんじゃないかと思う。

 四月。この時期は新入生、在校生含めて一番エネルギーを使うだろう。特にこの新歓期、大学にはこんなにも人がいるのかと思うくらいキャンパス内は溢れかえる。
 自分のサークル、部活動の頭数確保のために、毎日必死の勧誘が続く。そんな俺も例外ではなく、新入生の勧誘に駆り出されている。
 まんまと抜け出した俺はいつもの喫煙所で煙草を吸っているが、聞こえてくるのは人の話し声と、まるで戦場のような圧迫感と緊張感がひしひしと伝わってくる。
 まあ……戦場というのは間違いではないな。
 一人喧噪から外れた俺は、煙草の煙を空へと漂わせる。

「勧誘は?」

 ふと背後から声をかけられ振り返る。そこには疲れ切った友人がおり、その顔を見てにやりと笑う。

「俺は頑張ったから休憩。そっちは?」

 首や肩を回しながらやってきた人物、遥にも同じように問いかけた。

「哲より頑張ったと思うよ」

 ベンチにドカリと腰かけて、ストレッチでもするように上半身をひねったり伸びをしたりしている。俺も遥が来たことで、もう一本煙草に火を点けてベンチに腰を下ろした。
 ――それにしても。
 俺はちらりと横に座る遥を眺めた。その視線に気づいた遥が怪訝そうにこちらを見ている。

「……哲に見られても嬉しくないんだけど」
「俺だって嬉しくないから。それより、それって部活の時着るやつだろ?」
「ん? ああ、服か。着ろ着ろ言われて着せられた」

 自分の着ている服を見回して眉間に皺を寄せる。その格好といい表情といい、癪なくらい似合っている。元がよければ大体カッコいいものだ。
 そういえば、遥のその格好で一つ思い出した。

「さっき月子ちゃんに会ったよ」
「月子に?」
「そ」

 ベンチから腰を上げて戦場を見つめる。相変わらず人は溢れかえっていた。

「月子ちゃんの格好も可愛かったな。すっごい似合ってた」

 何も言ってこない遥を見ると、少し不機嫌そうな、不貞腐れたような表情をしていた。

「まだ会ってないのか、月子ちゃんと。あー悪いねー先に見ちゃって」
「……うるさいよ、哲」

 図星だったのか、口元を手で覆い視線を逸らす。


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