Lesson.02

大学の勉強なんかより、大事なモノはたくさんある。

そう――たとえば僕と君とのこととなれば、なおのこと。



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 平日の昼下がり。
 冬晴れの空は青く高く、気持ちの良いくらい澄み切っていて、風は冷たいけれど心地よく感じる。

 僕は月子と二人街中をぶらぶらと歩いている。
 二人とも大学の講義はあったんだけど、こんな日は外に出る方が気持ちがいいから、渋る月子を拝みたおして今に至る。
 つまりサボりなんだよね。

「心配?」

 少し俯きながら歩く月子に声をかける。多分講義もサボったことがないだろうから、少し心配になった。

「心配……ていうわけじゃないよ」

 顔を上げて僕を見る月子は、少し困ったように、申し訳なさそうな表情をしていた。

「ただね、遥の友達に悪いことしたかな、て」

 ノート任せちゃったから、と呟くと困ったように笑った。
 ――なんだ、そんなことか。

「大丈夫。ちゃんとお願いしておいたし」
「……そう、なんだけど」
「この前会わせた奴いるでしょ? アイツにお願いしておいたから」

 月子は顔を上げて僕の顔を見つめる。 最近少しずつだけど、月子は僕の目を見て話すことに慣れてきたみたいで、僕は嬉しくなる。
 やっぱり顔を見て話せるのは嬉しいから。

「哲朗くん、だっけ?」
「うん、そう。哲。今度会ったらお礼言えば大丈夫だよ」

 僕は半歩後ろを歩く月子に振り返り、右手を差し出した。

「だから、今は僕と遊んでくれる?」

 月子は僕の顔と右手を見比べて、恥ずかしそうに笑いながらゆっくりと左手を重ねた。

「うん、そうする」

 きゅっと僕の指を握る。小指と、薬指と、人差し指。手を繋ぐと言うより指繋ぎかもしれない。
 いつも僕から手を繋いでいたから、月子から手を、指を握ってくれたのは初めてだった。
 僕も三本の指で月子の手を握りしめた。
 白く綺麗な手はほんの少し緊張していて、僕は笑ってしまった。

「緊張してる?」
「……もう、手握らない」
「ごめんごめん」

 拗ねてしまった月子を宥めながら、僕は彼女の歩幅に合わせて歩く。

 半歩縮まった二人の距離。
 まずは、はじめの一歩。少しずつ、少しずつ慣れていこう。
 僕と君との関係は始まったばかりだから。


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