スカートは膝上十五センチ
「ちょっとソレ短すぎないか?」
「えー、普通だって」
ソファーに寝転がりながらテレビを見ている俺の前を、行ったり来たりする彼女の姿を目で追う。揺れるスカートから見える太ももがチラチラと目に入ってくる。
「いや、短い」
「だってみんなコレくらいだもん」
立ち止まり、スカートの裾を持って丈を確認する。
「やっぱりコレくらいだよ」
「だって見えるでしょ、その長さだと」
何が見えるかまでは言わなかったけど、彼女はわかったようでしたり顔で笑った。
「わかってないなあ。意外と見えないものなんですよ」
くるりとその場で回ってみせると、スカートはひらりと揺れた。
確かに見えない。
けれど見えそうで見えないそのもどかしさもあり、俺は眉間に皺を寄せる。
「ね? 見えないでしょ?」
「……残念なくらい見えない」
「うふふふ」
そんなニタニタ笑われても、彼氏的立場から言わせればやっぱり短いのには変わりない。強要するわけにもいかないので、諦めのため息は自分が思った以上に重いモノだった。
「そんなオヤジっぽいため息つかないでよ」
「なんだよ、そのオヤジっぽいため息って」
そんな偏見よくないぞ、と思いながらソファーから身体を起こす。
「そんなオヤジ達からパンツ見られないようにな」
「はあい」
絶対聞いていないだろう生返事に何を言っても無駄だと悟る。
まあでも。
まじまじと彼女のスカートから伸びる足と、見えそうで見えないそのせめぎ合いはなかなかいいかもしれない。
そんな男の真情を吐露するより、言うべきことがあることに気づく。
気づかないものなんだろうか、それとも俺の前だから気にしないんだろうか。
……たぶん前者だな。
「なあ」
「んー」
未だバタバタと部屋の中を行ったり来たりする彼女を目で追いながら呟く。
「今日、ドット柄の紐だろう」
ピタリと動きを止めた彼女はバッと振り返り、スカートの裾を押さた。
「見えた?!」
「いや、見えてない。ただ――」
噛みつくような剣幕で言い寄ってくる彼女を目の前に、俺は自分の見解を述べた。
「ワイシャツからブラが透けてるのと、その組み合わせだと自然と紐だってわかるじゃん……て、叩くなよ」
ぽかぽかと俺の身体を叩く彼女の顔は真っ赤に染まり、「バカ、変態」と繰り返す。
男なんてそんなもんですよ。
仕方ないから彼女の腕を掴んで、黙らせるためにキスをする。ぱたりと静かになった彼女を抱きしめた。
「ほんと、見せるのは俺だけにしてくれ」
おそらくスカート丈は変わらないだろうが、少しは気にしてくれることを祈りたい。俺の小さくため息をついた。
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