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「毎年恒例だけど、今年も真崎の机のまわりはすごいことになってるね」
「そうなんすよ、外回り行って帰ってくるたびに袋やら箱やらが増えてるんですよ」
「それに、社内に真崎さんがいるかと思うと、真崎さんが席を立つと何人かの人がそろそろと席を立って後を追いかけるんですよ。もう見ていて楽しくて」
「営業部のみなさんへって形で持ってきてるのに、なぜかみんな真崎に持って行くんだよな」
「噂は聞いてましたけど、まさか真崎さんがここまですごい人だったとは知りませんでした」

 わらわらと俺の机の周りに集まってきた同僚やら先輩やら後輩やらの話を、ただじっと聞いていた俺はいい加減イライラも頂点にきて頭をかきむしる。

「お前らうるさい、頭上で話すな、どっか行け。というか、席戻れ」
「残念、俺は真崎の隣だから無理なんだよね」
「お前ももうしゃべんな」
「真崎がキレたから、またあとで話そうか」

 千鳥はにこやかな笑顔で後輩たちに手を振り、席へ戻るよう促す。その声に散り散りになったあいつらの背中を見送り、そして改めて机の周りを眺めるとため息が漏れる。

「なんだかんだで今年も結構な数いったんじゃない?」
「俺にこれをどうしろと言うんだ……」
「とりあえず持って帰ったら?」
「こんなに食えるか」
「星宮さんと一緒に食べるか、あとは社外からの貰い物はここでみんなで食べるかだね」
「……ちょっと煙草吸ってくる」
「道中お気をつけて」

 千鳥のさわやかな笑顔にいら立ちを覚えながら、一先ずこの場を離れたい一心で席を立った。書類やファイルの上にまで置かれたチョコレートたちを、まず俺はどうやって持って帰るか考えあぐねていた。





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