バレンタインとチョコとキス
2012/02/13 21:41

「東雲《しののめ》、東雲」
「どうしたの?」

東雲の部屋で寛ぐオレは、持ってきた例のモノをカバンから探しだした。明後日はバレンタインで、今日は日曜日。早いけど、問題はない……はず。

東雲はオレの言葉に身を寄せて顔を覗き込んでくる。これじゃあ、キスできそうだなと思ってしまったオレはヤバい。

「これ……」

おずおずと差し出した箱に、東雲は目を丸めた。刹那、「祥夏《しょうか》ちゃん?」と緩く首を傾げてしまう。

「そりゃオレは男だから、東雲が不思議がるのも解るけど……チョコだよ。チョコレート。バレンタインだから。いや、少し早いけどな」

男だっていうのも、女装しながら言っても説得力はないけど。

「あー……そうか。バレンタインか。忘れてた」
「忘れてただと!? お前バカか! 一年で一番チョコが食える日だぞ! オレは義理チョコしか貰ったことないけどなっ!」
「いや、僕もそんなに貰ったことないけど」

とか言いながら、絶対貰ってるよなコイツ。顔よし頭よし、背も高いからな。貰わないわけないよな。

オレが怪訝な顔をしていることに気づいた東雲は、箱を受け取りながら耳打ちをしてきた。

「本当に貰ったことないよ。祥夏ちゃん以外は家族からしか貰わない。他は悪いけど、断ってる」
「え、えぇっ!? なんで?」
「祥夏ちゃん、それはワザと? いや、可愛いからそれはそれでいいけど」
「可愛くないから」

東雲は頭を撫でて手を滑らせる。ウィッグに絡む指を口許に寄せて、それに口づけた。

「僕は祥夏ちゃんが好きだから、他の子の気持ちには応えられないし」
「ばっ……か、やろ……」

なんでそういうことをさらりとやったり言ったりできるんだ。

「ねぇ、祥夏ちゃん。キスしたい」
「し……したいなら、早くしろよ。その先はダメだからな」
「はいはい」

東雲は小さく笑って何度も口づけてきた。満足して離された唇から漏らされる言葉に、オレは笑って答えてやった。

「チョコレートありがとう」
「おう」
「お返しはなにがいい?」
「別にいらねぇよ。あげたかったからあげただけだし」

そう言えば、東雲はとろけそうなほど極上の笑みを見せた。東雲のその顔が本当に好きだから、オレはその顔が見れただけで満足だったりするんだよね。言えないけど。



end.
12/2/13

Category:偽り彼女は甘い罠



ご意見/ご感想/ご指摘
ひとこといただけたら嬉しいです!
[Clap] [Mail]

[5.Top[小話置き場]] [0.Home]






×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -