沖田という男
今にも斬りつけようとしていた男達の叫び声と共に現れたのは一人の男だった。
一瞬何が起きたのかわからなかったが、刀が握られてるのを見て理解した。そう、自分を囲んでいた男達を斬ったのだ。
浅葱色の羽織を着た男は羽織と刀に血を染み込ませ、顔は笑っているがこちらを見ている目は鋭かった。
背中には冷や汗が伝い、ゾクッと背筋が震えた。
「君、見慣れない格好してるね」
絡まれた男達から解放されたと思ったが、ピンチには変わりないらしい。
しかも先程の者達よりもかなりできると見える。
どうすることもできないと諦めかけたが、倒れている男が使っていた刀が目の前をちらつかせる。
なにもしないよりかはマシ。そんな言葉を頭に過らせ、少年は刀の柄を掴んだ。
「僕とやる気?新選組に楯突くとは、勇気だけは認めてあげるけど…」
「やってみないとわからないだろ?」
お互い刀を構える。
すると構え方がよく似ている。その事に男は少し驚きを見せていた。
「君は一体何者?」
「さぁ、何者だろ」
そう言い終わると少年は駆け出し男と刃を交わした。
攻めと守り。刀と刀の音が響き合う裏路地で、お互い一歩も譲らなかった。しかし一瞬にして少年に隙ができた。その瞬間を見逃さず、男の突きが少年の腕を掠めた。
掠めた腕からは血が流れ、少年の構えが乱れた。刹那、少年の首元に刃先を突きつけられた。
「正直驚いたよ。まさか僕相手にここまでやるとは思わなかった。でもそれも終わり…」
しかしあることで男の動きが止まった。
そう、先程自分がつけた傷がうっすらと治っていくではないか。
それを見た男は最初は驚いていたが、次第に何かを考え込みだした。そしてすぐこちらに顔を向け、自己紹介を始めた。
「僕は新選組一番組組長、沖田総司。君のその体に興味があるなぁ」
「……は?」
威圧感は変わらないが、さっきまで激しくぶつかり合っていたのが嘘のように沖田と名乗る男は淡々と事を進めていった。
「うーん、その格好じゃ目立つし…。あ、そこの君。羽織、脱いでくれる?」
近くにいた部下らしき者が浅葱色の羽織を脱ぎ沖田と呼ばれる男に渡した。
何をするのかと思いきやその羽織をこちらへ投げつけきたではないか。
「それ、着てね。今から君を屯所に連れていくから。それから、逃げようとしたら殺すからね」
「え、ちょっ…!?」
ニコッと笑い有無を言わせない威圧感は変わらず。
ここで迷っていても行く宛もなく、生きるか死ぬかは今は置いといて。少年は沖田と呼ばれる男が言うように着いていくことにした。
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