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「声明は?」
「気合い入ったのが来てますよ。読みますか?」
悪役の声明なんて決まり文句しか思いつかない。つまり同じような声明ばかり。読みますかと聞かれて読みたい奴などいるものか。ロイは一言断りを入れてリザも納得した。
そしてガチャっと扉を開けトレインジャックを調べている部下がいる部屋に3人が着く。
「──で、本当に将軍閣下は乗っているのか?」
確認をするロイ。
正直言うと将軍閣下がいるとなるとやりにくい。
「今確認中ですがおそらく」
「てか将軍がいるからトレインジャックしたんだろ?」
ロイの部下である『ヴァトー・ファルマン』の言葉にすかさずシアンのキツイ言葉が刺さる。
そんなシアンの姿を見るロイの部下一同。口を金魚みたいにパクパクさせる者もいれば久しぶりに会った嬉しさに姿を見せる本人の背中をバシバシ叩いてお帰りと言う者。様々だが国家錬金術師になって帰ってきたシアンに皆が喜びを覚えた。
実は以前にも関わりがあったのだ。国家錬金術師を目指す前は姉と二人で暮らしており、姉が軍人で国家錬金術師ということもありロイや部下達と何度も会っていた。
シアンが国家錬金術師を目指すとなってからはイーストシティを離れていたため会うこともなかったが、だからこそ喜びを噛み締めた。
「しかし困ったな。夕方から愛しのシアンとのデートが…」
「あれ?幻聴が聞こえるんだけど」
「たまには俺達と残業デートしましょうやー」
シアンの怒りの拳がロイに向かれると同時にそのイラつきのせいかまたすごい言葉が交わされる。
「いっそのこと将軍に犠牲になってもらうとかどう?」
「ふむ、それはいい考えだな」
「あ、あのー…乗客名簿あがりました」
遠慮しがちに乗客名簿を渡すのもまたロイの部下『ケイン・フュリー』だ。そしてそれを見るロイ、覗き見るシアンと『ジャン・ハボック』。
「あー、本当に家族で乗ってますねハクロのおっさん」
「まったく…情勢が不安定なのは知ってるだろうにこんな時にバカンスとは…」
将軍閣下にも今すべきことがある。
だが、愛すべき家族がいることは変わらない。家族との時間を取り上げてしまっては、それはただの最低野郎じゃないか。
「でも、家族と過ごすことって大切…だよな」
シアンのこの言葉に周りの者は返す言葉がなかった。ロイは、そして部下も知っている。どれだけ望んでも戻ってこない家族。
それでもたった1人の肉親である姉に必ずまた会えるとシアンは信じているのだ。
「そうだな。君の言う通り家族は大切だ」
「ロイ…」
シアンの心情を読んでか、ロイは髪をクシャリと一撫でするともう一度乗客名簿へ目を通す。
そしてシアンからまた黒い一言が。
「いっそのことロイが犠牲になればいいんじゃないの?」
「あのな、真顔で言わないでくれたまえ;;それに今日は早く帰れそうだ。鋼の錬金術師が乗っている」
「てことは現場に直行ってことっスね大佐」
「準備完了次第行くぞ」
「「了解!!」」
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