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「あぁそうだ。君に会わせたい人物がいるんだが…」
「会わせたい奴?」
「そう、彼も国家錬金術師でね。知らない人はいない最年少国家錬金術師って言ったら君も分かるだろ?」
大体想像はつく。
なんたって最年少で国家錬金術師になったのだ。知らない奴は余程世間知らずな奴だ。
兄弟で旅をしていると前からロイに聞かされている。シアンは何故兄弟が旅をしているかは知らないが、会うことになるとしたらやっぱり憧れの一人でもあるので嬉しい。ロイの前でもあるため表情には出さないが内心では喜びが溢れるほど。
「いつ頃会えるんだ?」
なんて聞いてみる。
「さぁね。なんせ彼らは目的のために旅をしているからな」
「ふーん」
「そのうちふらりと帰ってくるだろう。ここに居たら必ず会えるよ」
そんな言葉を信じいつ会えるかも分からない兄弟に会えることを楽しみにしていた。しかしそれも束の間、司令部内が慌ただしくなってきた。
廊下では軍人達の走る音が絶え間なく続く。
そしてここも…
「お話されてるところ申し訳ありません大佐」
「どうした。やけに騒がしいな」
ノックと共に部屋へ入ってきたのはロイにとっては厳しい…が、本人よりかなり頼りになる副官『リザ・ホークアイ』である。
シアンにとっては姉のような存在。
そんなリザが書類を読み上げた。
「トレインジャックのようです。乗っ取られたのはニューオプティン発特急○四八四○便。東部過激派『青の団』による犯行です」
ふむ、と答えを返すロイ。
今時トレインジャックなんてダサっ。むしろ『青の団』っていう名前からしてパチモンじゃねぇかなんて声には出さないが内心そう思うシアン。
国家錬金術師になって早々事件をお目にかかるとはまた最悪な日。早く帰って明日からの初勤務に備えようと思っていたが、そういうわけにはいかなそうだ。
「シアン、君にも付き合ってもらうぞ」
「その言葉、来ると思ったぜ。ま、どんなものか見てみるか」
「よろしくねシアン君」
「よろしくリザ姉…じゃなくてホークアイ中尉かな」
そんな微笑ましい姿も終わり。
3人はロイの部下がすでにトレインジャックを調べているであろう部屋へと急いだ。
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