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「で、鋼のは何が望みなのだ?」
「ん?あぁ…」
すっかり話が逸れてしまったが、本題へと移す。
「この近辺で生体錬成に詳しい図書館か錬金術師を紹介してくれないかな」
「生体錬成?」
なんで生体錬成を?と疑問をぶつけるシアンだったが、エドワードは軽く受け流す。
シアンは人様にもいろんな事情があるのだろうと、深く追求しなかった。
誰だって話せないことの1つや2つある。もちろん自分にも。
そこに共通点があるとはまだお互い気付きもしないが。
「鋼のはせっかちだな。久しぶりに会ったのだからお茶の一杯くらいゆっくり付き合いたまえ」
「…野郎と茶ぁ飲んで何が楽しいんだよ」
確かに。とシアンもうんうんと頷く。
そしてガツンと一言。
「その前に溜め込んでる書類をどうにかしろよな」
「また溜めてんのかよ。中尉が嘆くぜ。いや、発砲するかもな」
ニヤリと含む笑みでエドワードが言うと、アルフォンスがありえるね、と更にロイを追い込む。
散々な言われようで落ち込みを見せるロイ。
しかし3人はそれを詫びる素振りもなく、寧ろ心の中で日頃の行いが悪いからこういう仕打ちにあうのだ。と同じことを思っていた。
「まぁ、そう落ち込むなって。鋼の錬金術師さんに何か教えてやるんじゃなかったのか?」
「あ、あぁ…そうだったな」
「ていうか名前で呼べよ」
「…じゃあ、エド?」
「何で疑問系なんだ?」
話がなかなか進まないなかコホンと咳払いを一つするとロイは続けた。
「『遺伝的に異なる二種以外の生物を代価とする人為的合成』──つまり合成獣(キメラ)錬成の研究者が市内に住んでいる」
「そんな奴いたんだ?」
「『綴命の錬金術師』ショウ・タッカー。なんでも2年前、人語を使う合成獣の錬成が成功して資格をとったらしい。当時担当じゃないから実物は見ていないがな」
「Σ人の言葉を喋るの!?合成獣が!?」
エドワードは驚きを隠せず思わず立ち上がる。シアンもまた驚きを隠せない。
無理もない。今まで喋る合成獣なんて聞いたことがないのだから。
ただロイは複雑な顔つきでもう一言付け加えた。
「人の言う事を理解し、ただ一言…『死にたい』と言ったそうだ」
「会ってみないと、どんな人物かはわからないってことか」
エドワードの顔には期待と不安という二つの表情が出来上がっていた。
そしてまたシアンも…。
「複雑だな」
そんなシアンの言葉が部屋に響いた。
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