その日は朝から体調が悪かった。
暑いし、体がだるく頭も霞がかったように働かない。
だが、悪魔祓いの任務が入っていた。
祓魔師としてのプライドと自分なら頑丈だから大丈夫だろうという自信があったから、任務に向かった。
メフィストに心配をかけたくないという気持ちや弱ってるなんて知られたら何をされるか分からないという恐怖感も少なからずあったが。
任務に関しては俺の祓魔師人生の中でも五本の指に入るくらい最悪だった。
同行していた他の祓魔師のおかげでなんとか任務を成功させられたが、普段ならありえないミスを犯し負傷してしまった。
そして今、俺は正十字学園理事長室、つまりメフィストの執務室の前に立っていた。
今回の任務の責任者は俺だから仕方ないのだが、正直来たくなかった。
祓魔師の制服であるロングコートの前をあわせ、ちゃんと全部ボタンがとまっているか確認する。

「あいつ、俺がケガするとうるせぇからなぁ・・・。独占欲が強いんだよな・・・。」

前にケガした時は「私以外に傷をつけられたお仕置きです。」とかなんとか言って、気を失うまで犯された。
おかげで次の日は腰が痛くて立てず、一日中ベッドの中で看病と称したメフィストからのセクハラを受けることになった。
二度とあんな思いはしたくない。
嫉妬されるのは嫌じゃない、むしろ嬉しい。
でも、なんつーか、度が超えてるんだよな・・・。
ここに立ち尽くしていても仕方ないので、しぶしぶノックして扉を開ける。

「任務ご苦労様でした、獅郎。それはそれは見事な働きだったとか。」

いつもどおり執務机の椅子に座ったメフィスト。
だが、いつもと違いその目は笑っておらず、こいつと長年の付き合いであるこの俺ですら恐怖を覚えるほどの怒気を纏っていた。
俺がケガしたことに対してこいつが怒ることは分かっていた。
だが、おかしい。
俺は今回の任務に同行した奴全員に、「報告は俺がするからおまえ達は何もしなくていい。」と口止めをしたはずだ。
なのになんでこいつは俺が部屋に入った瞬間から怒ってるんだ?

「なんで貴方がケガしたことを知っているのか疑問に思っている顔ですね?他の祓魔師に対して口止めでもしたんでしょうが、無駄ですよ。貴方のことで私が知らないことなど何一つない、あってはならないのだから。」

椅子から立ち、メフィストが近づいてくる。
ここにいたらヤバイと頭では分かっているのに体は魅入られたかのように動かない。

「報告は結構です。そんなことよりも覚えていますか、獅郎?前に貴方がケガした時、私は貴方に次は許さないと言いましたよね?それに対して貴方は二度としないと約束しました。にもかかわらず、貴方は再び私以外のものがその体に傷をつけるのを許した。これはどうしたらいいんでしょうねぇ?したくはなかったですが、私以外のものが貴方に触れられないよう閉じ込めるしかないんでしょうか?」

メフィストの息が吹きかかるほど近くで言われる。
その美しい翠の瞳が俺を映す。
メフィストの細く綺麗な指がコートのボタンにかかり、一つずつ外していく。
俺はといえば、メフィストの瞳に囚われ瞳を見つめ返すだけで指一本動かせない。
メフィストの手によってコートが肌蹴られ、負傷した肩があらわになる。
メフィストの顔がひどく不快そうに歪む。
メフィストの手が腰にまわりぐっと引き寄せられる。
さらに顔が近づき、口づけられる。
そう思ったときだった。
ひどい眩暈に襲われ、視界が揺れる。

「獅郎っ!?」

珍しくメフィストの本気で焦ったような声と崩れ落ちる体を抱きとめる温もりを最後に感じて意識を失った。



「うん・・・・・。」

瞳を開けると見覚えのある天井だった。
気だるさの残る体でいつも見上げる、メフィストの屋敷の天井だ。

「気がつきましたか、獅郎?体は大丈夫ですか?」

天井にかわり心配そうなメフィストの顔が視界を埋め尽くす。

「メ・・フィスト・・・。」

「熱があったなんて・・・。確かに貴方の顔が赤かったですけど。なんで貴方はそんな体調が悪いのに任務に行くなんて無茶するんですか!いきなり目の前で恋人に倒れられて私がどれだけ心配したと思ってるんですか!」

「わりぃ・・・。」

珍しく素直に謝罪する。
メフィストに心配をかけたのは事実だし、なによりも今のメフィストの機嫌を下手に損ねると大変な目に遭いかねない、俺が。
気を失う前のメフィストの言葉は絶対に本気だ。
こいつなら俺を独占するために監禁だってやりかねない、っていうか絶対やる。

「まったく貴方は本当にどこまで私を振り回したら気がすむんですか?はぁ、本当に貴方を閉じ込めたいですよ、私しか知らないところに。ああ、怯えなくていいですよ。するつもりはありませんから、少なくとも今はね。」

だって閉じ込めたら私の大好きな貴方の笑顔がなくなるでしょう?
そう言ってメフィストは苦笑し、俺の額に口づけた。


その後、本格的に熱があがりだしメフィストに看病された。
お粥だとか言ってメフィストお手製の得体の知れないなにかを食わされたり、熱が下がった後にお仕置きと看病のご褒美とかいってなんかもう・・・いろいろされた。
俺はもう二度とこいつの前でケガや病気にはならない、なってたまるかと誓った。
でも、たまには、そう、本当にたまにならこの独占欲の塊である悪魔に嫉妬されるのも悪くない。





……………


來麗様より頂戴いたしました…!!
嫉妬深い理事長がドストライクすぎて辛いです。そんな理事長を受け入れる神父が好きすぎて悶えます…!
この度は素敵なメフィ藤小説をありがとうございました!!改めて、これから仲良くしてやってくださいませ…!



11.09.01


(4/6)
[back book next]

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -