「ねぇ獅郎。貴方の目を私に下さい」


貴方の目に映って良いのは、私だけです
私以外をその目に映すなど、あってはならない


「別に構わねぇが、そうすりゃ俺は、二度とお前を見なくなる」


お前は俺を見ていられるけど、俺はお前が見えない、見ない
俺、お前の顔、好きなのになぁ


「…それでは、貴方の耳を私に下さい」


貴方の耳に入って良いのは、私の声だけです
私以外の声など、聴かずとも良い


「それも構わねぇが、そうすりゃ俺は、二度とお前の声に応えなくなる」


お前は俺の声に応えられるが、俺はお前の声に応えられない、応えない
俺、お前の声で呼ばれるの、好きなのになぁ


「……でしたら、貴方の声を、私に下さい」


貴方は私の名だけを、呼べば良い
私以外の名を呼ぶなど、許さない


「これも別に良いけどよ、そうすりゃ俺は、二度とお前を求めなくなる」


お前は俺を求められるが、俺はお前を求められない、求めない
俺だって、お前が欲しくなる時だって、あるのになぁ「………ならば、貴方の手を、足を、私に下さい」



貴方がその手で触れて良いのは
貴方がその足で、追い縋って良い存在は、私だけだ

私以外の者に、触れるなど
私以外の者の元に、行くなど

そんなの、堪えられない――貴方は私のものだ



「………良いだろう。でもな、そうすりゃ俺は、二度とお前に触れなくなる
足が失くなりゃ、二度とお前の隣に立って、同じ景色を見れなくなる」


お前は、俺に触られなくても、平気なのか?
隣に立って、同じ歩幅で歩いていけなくなっても、構わないのか?


「………………だったら貴方は、何だったら私に寄越してくれるんですか」


どれだけ身体を許してくれたって
どれだけ睦言を囁いてくれたって
どれだけ、貴方が私のものだと叫んだって



「貴方の“一番”は、あの子供達のものじゃありませんか」



だったら、ねぇ、ほんの少しで良いのです
私にも、何か下さいよ
私の何もかもは、全部貴方にくれてやってるのに


「しかも貴方は父上に身体を狙われる始末だ――でもねぇ、それでもどうしようもなく私は、貴方が欲しいんですよ」
悪魔である私に、ここまで言わせているんですよ
貴方はそれに、応えるべきだ



「――――ばかだなぁ、メフィスト」


お前、今まで俺の何を見ていたんだ?


「おらぁもうずっと前から、お前に貰われていたと思っていたんだがな」


魔神のこともチビ共のことも、含めて
お前は俺をモノにしてんじゃねぇの?


「悪魔ってやつぁ難儀なもんだな
丸々くれてやってるようなもんなのに、これ以上、何を欲しがる?」


あ、もしかして、俺の命が欲しいとか?


「命は要りませんよ
でも、そうですねぇ―――でしたら」






でしたら、貴方の心を、私に下さいよ







我が儘な悪魔




(あ?それこそが、とっくの昔にお前のもんだろーが)
(…………っ、貴方って人は)



11.07.03


(9/9)
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