私たちは確かに愛し合っていた(ゾロ)


(※現パロ)




「ゾロ、もうやめよ、別れよう」

これ以上あんたといたら壊れる、とmは声を絞り出す。喧嘩の末、部屋は散らかり、窓は割れ、物を投げつけ床はガラスだらけ、mには痣が、俺の拳には血が滲んでいる。俺もコイツも半ばヒステリックになりながら叫び、暴れて相手を罵倒する。だが俺はコイツを離すつもりはないし、壊れるなら俺も一緒に壊れてやる。付き合うというよりか俺たちが求め合い一緒にいてから2年が経った。出会った頃はふと目が合うだけで俺にお前が微笑んでたなんて今となっては信じられない。俺たちはお互いに依存し過ぎたのだと思う。
もう出ていくと言って聞かないmを壁に叩きつける。mの頭の横を思いきりぶん殴って壁に穴をあけた。mは泣き崩れた。なァ、これが俺の愛情表現なんだよ。お前には伝わってるよな?
mの嗚咽が落ち着くのを待つと、汗や涙でぐしゃぐしゃのmの腕を引っ張り、風呂場にぶち込む。シャワーを頭からかけて、服を脱がしてやる。体を洗ってやり、風呂をでたら髪を乾かしてやる。俺はお前のことを愛しているんだ、m。仲直りした俺たちは狂ったようにセックスする。こんな不安定な関係がどんな形でいつぶっ壊れるのかは分からねェが、ひとつ分かるのは、俺はmを離すつもりはない。

私はゾロが好きでしょうがなかった。何をするにもどこに行くにもゾロと一緒にいた。1日中遊び倒し、金が無くなれば2人で悪いことをして金を稼ぐ。その金が無くなったらまた悪いことをして金を稼ぐ。この繰り返しだった。お互いほかの異性と寝た時もあったし、その時は必ず相手は半殺しで、浮気した本人もボコボコにされた。好きな時間に起きては街へ遊びに行き、好きな時間に寝てたら昼夜は逆転したし、喧嘩はどんどんヒステリックになった。暴力は当たり前で、この前は鼻を折られた。だから私はゾロの肋骨を折ってやった。ゾロと一緒にいたいだけなのに、ゾロといればどんどん堕落していく気がした。悪いことに手を染め金を稼ぐのは楽だったが、そんなのでは駄目に決まってる。次こそはしっかり働いて稼ごうと思うのに意志の弱い私はまたゾロと楽に金を手にしてしまう。全てゾロのせいにして私は別れたかった。本当に弱いのは自分なのに、あんたのせいで人生がめちゃくちゃになったと怒鳴りつける。ゾロはそれを黙って聞いているだけだった。別れることもできない弱い私はきっと1人になっても堕ちていくのだと思う。元々酒は好きだったが今は飲まないとやってられない。常に酒を浴びるように飲み、ゾロに止められては私は暴れ、叫び、家中をめちゃくちゃにする。寝るときは睡眠薬を飲まないと寝れない。一度、眠れなくて睡眠薬を一気に飲んで倒れて目をあけたら病院だったことがある。病室にも関わらず、ゾロは私を殴った。もしかしたらゾロには私が死にたいように見えたのかもしれない。お互いがお互いを死ぬほど傷つけたし、めちゃくちゃな毎日だったけど、それでも私はゾロといるのが楽しかったし、私はゾロを愛していた。

「おい、m。俺のために墨いれてこいよ。」
ゾロは突然そんなことを言い出す。は?と返事をすると、一生俺のモノっていう証。とゾロはニッと笑った。少年みたいな笑顔で何を言っているんだこいつは。じゃあゾロも一緒にいれてよ、と言うと、いいぜと返事が返ってくる。結局私たちは背中に2匹の龍を彫ることにした。さっそく彫師のところへ行き、龍のデザインや細かい場所を決める。背中全体なので1年ほどかかると言われた。値段は2人で数百万。私たちはその日から月に一度のペースで彫師の元へ通った。馬鹿なのかもしれないが、2人に一生消えない証が残ると思うと嬉しくてならなかった。

私たちは毎日遊び、金がなくなっては悪いことをして金を稼ぎ、そしてまた毎日遊び歩く。私たちは人間として堕落していった。毎日2人で酒を浴びるように飲み、狂ったように愛し合う。そんな生活を繰り返していた。シラフになるとふと考える。もう私たちに先はない。こんな関係はお互いのためにならない。それどころか、どんどん悪い方へ進んでいってる気がする。世界が私たちを置き去りにしてから随分時間が経ってしまった気がした。私は隣で寝ているゾロを置いて1人コンビニに行き、金を降ろす。その帰り際にでかいボストンバッグを買って家に戻った。部屋には酒の瓶や使用済みのゴムの残骸が散らかっている。灰皿には乗り切らないほどの灰殻。もうこんな生活が嫌になった。ゾロはまだ寝ている。タンスをあけ、自分の衣類を無造作にボストンバッグに詰め込む。ゾロはその音で目を覚ました。どこ行くんだよ、とまだ呂律のまわらない舌で怒鳴り、私の足を掴む。まだ酔いの冷めないゾロをボストンバッグで殴り、手を離させる。怒鳴っているゾロを尻目に私は家をでた。

携帯をコンビニのゴミ箱に捨てた。私は涙が止まらなかった。いつからこんな風になってしまったのだろう。このままだったら2人は本当に駄目になる。こんな生活が続くはずがない。こんなことをしていたらそのうち2人でムショ行きだ。ゾロとはもう一生会うことはないだろう。けれど私たちは確かに愛し合っていた。生まれ変わってもまたゾロに出会いたいと思う。次は普通に付き合って、普通の生活の中で愛を育み、死ぬまでそばにいたい。背中のまだ筋彫りの龍も、今は何の意味も無くなっていた。









2017/7/9
ああ…ゾロ好きの方すみません。全てフィクションです…。


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