独占(エース)




白ひげ海賊団の縄張りの島で海賊たちが暴れていると言うので、どこの命知らずだと島に訪れればすぐさま乱闘になった。銃や大砲の発砲音に紛れて行き交う怒号や悲鳴の中、数年ぶりに会ったこの女は俺を「どなた?」と言わんばかりの目で見ていた。数年前とは言え、あれだけ愛を呟き俺を求めていたのはどこのどいつだよ。先ほどまで聞こえてきた喧騒も一瞬で聞こえなくなり、目の前の女をただ見つめる。

「誰かと思ったらエースじゃない。」

「…随分いい女になったじゃねェか。」

皮肉まじりに言うと女はフンと鼻で笑った。艶のなくなった髪に日に焼けた肌。鋭かった瞳はさらに際立っていた。やっと耳に戻ってきた喧騒の中に、どこからか撤退と叫ぶ声が聞こえる。
「お前、海賊になったんだな。」
「そう。だったら何?」
「あーあー。オンナがこんなところに入れちゃって。」
エースはmの胸元に入った海賊旗の刺青をなぞる。
「あ。お前も海に嫌われてんのか?」
「……」
ん?とエースは胸元から手を離し、黙る彼女を見つめる。口付けようとエースは彼女の頬に手を伸ばすも、彼女は身を翻す。自身の海賊船に戻る彼女の背中を見つめ、エースは行き場のなくなった手を収めた。あーあ、敵同士じゃねェかよ。まァこの海の上じゃ、お前なんかほっといてもすぐ死ぬだろうけど。

「次会ったら、一番に俺がお前を殺してやる。」

他の男に殺されるくらいならな。とっくに姿の見えなくなった彼女のほうを見て、エースはニヤリと笑った。








2017/7/6


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