間違えた!
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(もう何度目か分らない2011年12月)
足立さんは俺を公園へと誘った。理由は言ってくれなかったけど、たぶん純粋に公園で遊びたいだけなんだろうと思う。
このところ足立さんは繰り返されるロールプレイングゲームというものに幾分精神を病んでしまったようで、きちんと足立透を続けるものの、俺と二人でいるときは精神が退行したみたいにはしゃいだり、かと思ったら黙って泣き出したりする。俺は毎回別の名前や人格が与えられ、演目が多い分、足立透をし続けなくてはならない足立さんよりはまだましだった。ましというだけで、やっぱりネジは好き放題取れてしまってはいるけれど。


足立さんは滑り台の階段を上っている。馬鹿に大きな滑り台だ。高層ビルの高さと同等くらいだろうか。急な角度は遊具にしては危険だと思われたが、俺は足立さんを止めようと思うことがどうしてもできず、それをただ見ていた。長い階段を上り詰める足立さんはふっとどこかに消えてしまいそうで、でも俺には何もできない。
やがて足立さんは階段を上り終えて、小さい真四角のスペースに立った。高みに立つ足立さんが今まで見たどんな姿より小さく、頼りなく見える。目を凝らすと傾斜を目の前に、今までで一番淋しい笑い方をする彼の顔がぼやけて見えた。



「これは愛の結果だから、君は答え合わせを間違っちゃだめだよ」

消えそうな声だった。
それなのに遥か下界にいる俺に聞こえてしまった。聞こえてしまったのだ。
そうして足立さんは、滑り方を知らなかったとしか思えない。急すぎる滑り台に頭からつんのめった。ごとん、と鈍く重い音がして、足立さんはそのまま転がり落ちる。前転のようにまとまった体勢ではないため細長い体があちこちに打ち付けられて、衝撃に耐えられないのだ。欠けていく。まず、左腕が外れた。次に右足。くるくる回りながらどこまでも落ちて行く。右手が取れると、今度は腰から下が丸ごとポロ、と落ちて、滑り終わる直前、締めとばかりに首から下の胴体が吹き飛んだ。

「足立さん、」

悲鳴を上げて滑り台の下に駆けつけると、ころり、と首だけがそこに残っていた。そっと持ち上げると、首は目を細めて笑んだ。
生きている。
驚く俺を見て生首はまた美しく笑い、そうして口をぱくつかせた。肺がないので声が出ないらしい。俺は声なき声をじっとみて、そうして理解した。
――救われたのだ。

無言で語り続ける救世主にたまらなくいとおしさがこみあげて、首の目元にそっとキスをした。間違いやしない、言い知れぬ充足感が喉に込み上げて言葉になって洩れだし、愛の結果を確かめた。



「あいしてる」



真っ赤な丸をつけたのに。
……なんだか、足立さんがないた気がした。








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