ポリゴンの恋人
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「足立さんを抱いてると死姦ってこんな感じかなって気になります」
「まぁ、死んでるしねぇ」
「あれ?死んでたんですか?」
「そりゃあ死んでるよ。やだなぁ」
「確かに声も上げないし妙に無表情だと思ったんです。なるほど、死んでたんですか」
「何本気にしてるの。君が下手なだけだよ」
「確かに体温があるし締め付けてくると思ったんです。やっぱり、生きていましたか」
「何本気にしてるの。君の熱と死後硬直だよ」
「違うでしょう。あなたも僕も生きてもないし死んでもないです。ポリゴンなんだから」
「あーあ、いっちゃった」
「いっちゃいました」
「明日、おなか痛くなったら君のせいだからね」
「子供ができたって責任取りますよ」
「ポリゴンの?」
「ポリゴンの」
* * * *
ひょいと、足立さんがテレビを覗き込んだ。目の前の頭にゲーム画面が隠れてしまう。
「変なゲームやってるね」
「結構面白いですよ」
「メタ発言するゲームなんて、萎えない?」
画面からこちらに顔を向けて、苦々しい顔で言う。どうやら少し前の下りから見ていたようだ。
「萎えますね」
「ゲームって自覚してる登場人物なんて気味悪いでしょ、見られてるみたいで」
「そうですか?ゲームはゲームだとしか……。ただのプログラムって感じで、あんまり怖くはないですね」
ふぅん。彼はそういうと少し考え込んで、そうして面白そうに笑みを浮かべる。なんとなく、不気味だった。
「……とりあえず、ヒロインに僕の名前付けるのはやめてね」
ぷつん、と電源を切られてしまった。セーブしてないのに、と非難しても足立さんは涼しい顔だ。俺は彼らにもう一度同じことを繰り返させるのが億劫で、結局二度とそのゲームで遊ばなかった。だからポリゴンの恋人がポリゴンの子供を孕んだかは、わからないままだ。
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