一行の一番後ろをしずしずと歩くナマエ。フードを目深に被り、懐にあるナイフを常にさすり、俯きがちに歩を進める。その陰気臭さに、エステルは戸惑い、カロルは心配し、リタは苛立っていた。会話をするかと思えば相手はほぼラピードであるナマエの徹底ぶりには、呆れを通り越して感心すら覚える。
戦闘となれば問題なくコミュニケーションをとり連携を組んでくれるため、ユーリは特に関せずにいたが、仲間内で淀みが生まれているような気がすると、何とかしたほうがいいか、くらいには思い始めた。
淀みというのは大袈裟か。気まずさ、だ。
ある日の買い出し、仲間のほとんどを宿に残し、ユーリは、ナマエを連れて出た。
「な、なんで、私……」
「おまえ、結構一人旅してたなら買い出しもしてたろ。教えてくれよ先輩」
さらっと流すと、ナマエは、渋々ながら納得したようにユーリの隣を歩いた。
「私のせいで、みんな、ちょっと心地悪そう……ですよね」
「自覚はあったんだな、てか、よく切り出したな自分から」
意外そうにユーリが呟くと、ぎこちなくナマエは笑った。「ユーリはみんなのこと考えてるから、そういうことについてだと思った」と。何とも言えない申し訳なさを味わいながら、ユーリは薬屋を目指す。ナマエに合わせて歩幅はいつもより小さめだ。
「ナマエが悪いわけじゃねえよ。慣れてないってだけだ」
「私がみんなの空気に慣れるのが一番いい……はず」
「無理して合わせることはねえぞ」
たどり着いた薬屋でグミなどをてきぱき補充し、会計を済ませるナマエを見て、ユーリは頷く。きっと慣れるまでもうすぐだ、そう焦ることはない。人付き合いが不得手といえど、こうスムーズに店を利用できるなら大丈夫だろう。ハルルでも町の人々と交流を重ねていたようだし、仲間と打ち解けるのも時間の問題だと思える。
「ユーリ。はい」
「なんだ?」
「おまけでもらった飴ちゃん」
思案していたユーリにナマエが差し出してきた二つの飴玉。ユーリがひとつ受け取ると、ナマエが残った飴玉を頬張った。あまい、と呟いたその顔が冴えないところを見ると、甘いものは得意ではないようだ。ユーリも飴玉を口にする。
「カロルへのお土産にすればよかったな、ナマエ」
「私からのお土産って言って食べてくれる、かな?」
心配そうなナマエの頭をひと撫でして、ユーリは踵を返した。
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