ここはラウムさんにあてがわれた部屋。そこでラウムさんはベッドに腰掛け、私はその前に置かれた椅子に腰かけていた。
ラウムさんが優しい手つきで私の耳を撫でる。明らかに長く、毛に覆われたこの耳を、私はあまり好んでいなかったけれど、ラウムさんは「兎さんみたいでフワッフワで良いじゃねえか!」と褒めてくれた。時折こうして撫でてくれるほどには気に入ってくれているらしかった。毛をとかすように穏やかな手つきは心地いい。そんな調子で、私の異端な羽や耳も撫でつけてくれるので、私は心地よさのあまり眠りそうになるのを堪えるのに必死だった。うと、うと、と瞼が閉じかける。子供に愛でられる人形もこんな気持ちなんだろうか? 他愛のないことを考えながら眠気に抗う。
うう、と小さく唸ってしまったとき、ラウムさんが私の顔を覗き込んできた。
「随分と眠たそうじゃねえか、コラ」
「ご、ごめんなさい。撫でてもらってたら気持ちよくって……リラックスしちゃったみたいです」
「そ、そうか……そうか……」
嫌じゃねえなら良いんだ、とラウムさんは呟く。嫌なわけが無い。嫌だったら、こんな近くでこんなに触れられることを許したりはしない。私にとってラウムさんは特別だ。思い切って私は振り返った。椅子から立ち上がり、ラウムさんの胸に飛び込む。「うお、っと」ラウムさんが私を抱き留めて、そのままふたりでベッドに倒れ込む。ラウムさんにしがみついたまま、私は言った。
「良かったら、このまま、私が眠るまで撫でてほしい……」
「お、おお? けどよ、おまっ、それだと……」
ラウムさんがもごもごと何か言うのを聞かないふりをして、もう一度その胸にすがりつく。
「私、ラウムさんと一緒に、眠りたいです」
うっすら漂う汗のにおい。伝わってくる鼓動は少しだけ早い。強張っていたラウムさんの手が私の肩から、そっと、背中へと回される。それを了承の意だと受け取って、私はことさら彼にすり寄った。
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