今日はしとしとと雨が降り続けている。
自分の家の中だから、と少し軽装なナマエ。このナマエは貴重だ。なんせ、僕と違って彼女は、普段尻尾を隠している。着こんでいないナマエはかわいい丸い尻尾を、僕だけにいま見せびらかしているのだ。正しくは尻尾の骨はスプーンとかへらのような形をしているから丸いというのは誤りかもしれない。けれど、真ん丸尻尾って響き、可愛くないかい?
「ティナリ」
「なに?」
「尻尾触っていいよ」
「良いの!?」
更に言えば、ナマエの尻尾を触れるのはレアケース。僕と違ってナマエはあまり尻尾や耳を触られたくないから。穏やかに笑うナマエの好意に感謝して、甘えてしまおう。ベッドで横座りになっている彼女の隣にぽすんと腰を落ち着け、そっと手を伸ばす。こちらにお尻を向けて尻尾に触れやすくしてくれているのは分かるんだけど、ちょっと色気が過ぎる。太ももとスカートの境界に一瞬だけ目をやって、すぐナマエの尻尾に意識を集中した。
僕も毛並みには自信があるけれど、ナマエの毛はもっと細くて柔らかい。尻尾について言えば、一見茶色に見えて、裏側が真っ白な毛っていうのもかわいい。
「ナマエの尻尾を触れるのが僕だけの特権で良かったなぁ」
「かなり無防備になっちゃうから他の人は……コレイと旅人とパイモンくらいにしか見せられないかも」
「えっ? 僕だけじゃないの?」
わりと本気でそう思ってたんだけど、と続けると、くすくす笑いながらナマエが手を伸ばしてきた。尾を撫でる僕の手に重ねて、ふわりと握ってくる。微笑みながら彼女は告げた。
「冗談。ティナリだけだよ。触られるの苦手でも触ってほしいなんて、矛盾した気持ちになっちゃうのはね」
ああ、良かった。僕はこう見えてナマエについては嫉妬深いし子供くさくなってしまうから。
今日の雨音のように優しい声音に安堵して、僕も微笑み返す。そして、
「もっとナマエに触れたい気分なんだけど、いい?」
「良いよ。ティナリ」
ここぞとばかりに、甘えてしまったのだった。
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