P3 荒垣 ※男主

 真田先輩の部屋で男子陣で集まってバカ騒ぎした後、疲れ果てたみんなは眠ってしまった。真田先輩の部屋をとっ散らかしたまま。
 まあまあ落ち着きなさい。こうなることは予想してましたよ、俺は。ええ。眠っている同胞たちを起こさぬように、懐からごみ袋を取り出し、後片付けを始める。缶やペットボトルは洗面台をお借りして軽くゆすいで、袋にぽいぽぽい。燃えるごみはまとめてポイ。これらをサイレントにこなす。順平くん、リーダー、真田先輩、みんなまァ良い寝顔でいらっしゃる。もともと片付いていた部屋――だと思う。トレーニング器具に圧迫されてるだけで――なので、大して苦労もしない。って、あれれェ?

「荒垣さん……っと」
「ナマエ」

 名前を呼ばれると同時に荒垣さんの手にごみ袋たちが回収される。いつの間にか、いや、元から眠らずにいたのか、荒垣さんは俺の後ろに立っていた。

「こぉいう時ぁのんびりしたらいいのにぃ」
「お前だってクタクタだろうが」

 笑って部屋を出る荒垣さんを、あくびを噛み殺しながら追いかける。
 薄暗いリビングでは、コロマルが丸まって眠っているだけだった。ああ可愛らしいワンモナイト! 二人で一瞬コロマルの見事な丸まり眠りっぷりに惚けたあと、キッチン方面へ向かい、ごみ袋を処理。ちょっと目が冴えたので、ホットミルクでも飲もうかなとハチミツと牛乳を手にしたら「俺にも」との声かけ。はいはいと二つ返事で用意する。ちょっとお手間を省くためにお鍋ではなくマグカップに注いだ牛乳を電子レンジであっためたら、テキトーにハチミツ入れて、ぐーるぐる。味見してから渡す俺えらい。
 荒垣さんの口にも合ったようで、二人仲良くホットミルクを啜る。

「荒垣さん今日はもう寝るんですねえ」
「どういうこった」
「いや、ちょいちょい今頃の時間、出かけることあるから」
「……まぁ、しばらくは大丈夫だ」

 どうしたことか、荒垣さんが、俺のことをコロマルを見つめるときみたいなあったかい顔して見ている。なんだかほっこりしてしまって微笑むと、くしゃっとした笑顔が返ってきた。
 あともう少しで影時間になる。今日の探索は無し。
 こんな時間だったら続いてもいいのになあと、俺は思った。



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