ナマエが走ってノイズの攻撃から逃れている。だが、あのスピードでは間もなく追いつかれるだろう。
「世話の焼ける……」呟きながらミナミモトは目前のノイズを消し去り、ナマエの元に駆けつけた。
「ミナミモトさん!?」
何を驚くことがあるのだろう、とミナミモトは思う。自分の嫁を助けることがそんなに不思議なことなのだろうか? ナマエのいた世界では、それは珍しいことなのだろうか? だとしたら……そんな世界、破壊してしまおうか。
(なんてな)
ナマエを片腕で抱きかかえ、ノイズに向かってバッジのサイキックを行使する。メラメラ燃え上がる火炎がノイズを一瞬で無に帰した。
その様を惚けたように見つめていたナマエが、はっと我に返り、ミナミモトを見る。
「み、ミナミモトさん。もう大丈夫なので下ろしてもらっても……」
落ちないようにとミナミモトに縋りながらナマエは呟いた。しかし。
「まだそういう気分じゃねぇ」
と、ナマエの太ももを撫でながらぶっきらぼうに言ってのけた。
リンドウたちが気まずそうに視線を逸らすなか、ナマエは赤くなりながらミナミモトのフードを引っ張ったり、はたいたり、逆にわしわししてみたりしながら「おーろーしーてーくーだーさーい」何度も頼み込む。
「ありがとうございます、大丈夫です」
「また戦闘になったらどうする?」
「全力で逃げます」
ミナミモトが嘆息した。
「全力で、俺のところまで、逃げてこい。まぁ迎えに行くが」
「分かりました、そうします! なので下ろしてください」
またもやミナミモトが嘆息した。
「……ナマエ。手厚く嫁をサポートして守ってみせた夫にご褒美のひとつくらいくれても良いんじゃねえか?」
「ごほーび?」
首を傾げるナマエを下ろしたかと思いきやぎゅうっと抱きすくめ、ミナミモトが顔を近づける。
「分かるだろ、優等生のナマエちゃんならよ」
「ううぅ……」
唇が重なる寸前でナマエは動き、ミナミモトの頬に口づけした。ちゅ、と可愛らしい音が響き、ミナミモトはにぃっと口元を釣り上げる。
「及第点だな」
ナマエは、リンドウたちに心の中でひたすら謝っていた。
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