むかしむかしあるところ
ある所に、それはそれは仲睦まじい夫婦がおりました。
ようやく授かった子が生まれる日を楽しみに、それは仲良く暮らしておりました。
晴れた日のことです。ふと、妻が庭の向こうに目をやると、沢山の果物や野菜が生い茂っていました。
その中に、それはそれは美味しそうなラプンツェルが生えておりました。
「あのラプンツェル、美味しそう」
しかし、その庭は、恐ろしい魔女の庭です。それでも妻は、ラプンツェルが食べたくて仕方ありません。
その想いは募り、妻はげっそり痩せこけてしまいます。
「あのラプンツェルを食べなければ、私、死んでしまうわ……」
愛する妻のために、夫は魔女の庭に忍び込みました。
そうして、妻のためにラプンツェルを何度も取って来てやりました。
けれどもある日、運悪く魔女に見つかってしまいます。
夫は、事情を説明し、許してくれるよう頼みました。
「分かった。なら、好きなだけラプンツェルを食べさせてやると良い。しかし、君達の子供が生まれたら、私がその子を引き取らせてもらおう。約束だぞ?」
夫は、心配に気を取られて約束してしまいました。
そうして、ついにお産の日となります……。
魔女がやってきて、約束どおり子供を引き取っていってしまいました。
子供はラプンツェルと名付けられ、今は、高い高い塔のうえに、ひとりっきりで暮らしているのです――。