舞台裏
「お疲れ様でした! 協力してくれて、本当にありがとうございます」
「なあ、俺と風花の役、出番少なくない?」
「出番あるだけ良いでしょ。私や天田くんやアイギスなんか一回喋ったきりなんだから」
「ゆかりッチ! 俺も一回喋ったきりですー!」
「ラプンツェルに従者とか犬とか出て来ましたっけ?」
「話の流れを記憶していたのがラプンツェル役である麻斗さんのみだった為、不安定な脚本になったとのことであります」
「だが、私はなかなか楽しませて貰ったぞ」
「ワンワンッ!」
「コロマルも満足そうだな」
「けど王子アグレッシブ過ぎじゃない? ビーストファングとか良かったの?」
「リアリティを追求して、疑問と向き合ったら、あんなことに……ってか、アレンジしたの奏夜くんだからね!?」
「だって殺伐としてたからユーモアをね。でも良いじゃん。ハッピーなエンディングで」
「真田先輩も迫真の演技でした!」
「ははっ、ありがとう山岸。ついつい気持ちが入っちまってな…」
「へぇ? こういうの好きなんだ〜」
「麻斗がラプンツェルだろ? 気合が入らない訳がない」
「え」
「ハイハーイ! 甘ったるい雰囲気禁止ー! 自覚のない口説き文句禁止ー!」
「順平さん…? ひがみって奴ですか?」
「うぎっ。…ま、まぁとりあえず劇完成したわけだけどさ。んでどーすんの?」
「そうそう。風花、一体この劇をやった意味は?」
「保育園の子たちに、お姫様が出る劇を見せて欲しいって言われたんです。こんなに完成度の高いものなら、きっと喜んでくれますよね!」
「……いや、これは…」
「見せられないだろ……」
「普通にシンデレラとかで良かったろうに」
「変化球にしてみた」
「話うろ覚えのくせに変化球もくそも無えだろ」
「うっ!」
「あ、クリティカル……」
ラプンツェルっぽいものは、そうしてお蔵入りとなりました。