相互記念リク


※名前変換無し



 同じクラスの月島くんは、暇さえあればヘッドホンをして音楽を聴いてる。
 席に着いてても皆より頭ひとつ飛び出てる長身に、耳全体を覆うヘッドホン。

 興味を持ったのは、その姿がきっかけ。




「月島くんって、いつもどんな音楽聴いてるの?」

「え、まあ……色々」

「好きなアーティストは?いるの?」

「……だから色々、って言ってるじゃん」



 ついこの前の席替えで、運良く月島くんの隣の席になった私は前々から聞きたかった事を勢い任せに尋ねた。
 そんな嫌そうにしなくても。
 そういえば月島くんと女の子が会話してるとこって、あまり見ないな。男の子と賑やかにしてるってのも見たことない。
 苦手なのかな、騒がしいの。


 嫌なイメージをつけられたくなくて、ふーん、そっかー。ってあまり追及せずにその場をやり過ごした。本当はその「色々」を知りたいんだけど。好きな人の好きなものって知ってれば知ってる程幸せな気持ちになれるじゃない?


 せっかく昼休みを見計らって質問したのにな。話が発展して長話になってもいいように……!って無駄な配慮だったけど。

 暇になったので携帯を取り出して弄っていると、横目で月島くんが鞄からヘッドホンを取り出してるのが見えた。これから聞くのかな。


「……聞く?好きなのあるか分かんないけど」


 ──私に言ってるの?思わずバッと月島くんに振り向くと、私にヘッドホンを差し出していた。

 え、えっ!!!嘘!


「い、いいの!?き、聞きたい!!」


 どもりまくりなのは承知の上……!こんなチャンス今度いつあるか分からない。月島くんの趣味を知る絶好のチャンス!!


 月島くんからヘッドホンを受け取ると、ゆっくりと頭にセットする。これだけで滅茶苦茶緊張して、少し手が震える。
 耳をすっぽりパッドが覆った。普段月島くんが使ってるものだと思うと、ドキドキが半端無い。ヤバい、心臓おかしくなる。

 ……っていうか、アレ??


「……痛い」


 思わず呟いた。ヘッドホンを装着して頭部が痛い。──これはつまり、もしかして。



「……僕より頭大きいんだね」


 や、やっぱりィィィィ!!好きな男の子の方が顔も頭も小さいなんて!
 悪いことしてないけど、何か恥ずかしい……。


 思わず下を向いてしまう。すると急に頭の圧迫感から解放された。

 え?


「ちょっと貸して」


 月島くんは私からヘッドホンを外すと、ヘッドバンドを調整し始めた。

 あ、優しい……。
 自分で出来たのに。胸の辺りがじんわり温かくなった。


「はい」


 そう言うと、イヤパッドを両手で持った月島くんは私にヘッドホンを着けてくれた。
 パッドの上から、月島くんの手が私の耳を覆う。


 ぎゃ、ぎゃああああああ!!!!

 うわうわうわ、こんな展開予想してないってば!!!



 どう?って聞いてくれる月島くんにまともに返事が出来ない。顔が真っ赤なのは自分でも分かるし、やっと口から出た返事は「い、い、いい、いいよバッチリ!あ、ありがとう!」という今日一番のどもりだった。

 月島くんは私の机に携帯プレーヤーを置いてくれて、「好きなの聞いていいよ」って言ってくれた。
 せっかく月島くんの好みを知るチャンスなのに、さっきの出来事が脳内を支配して曲名もメロディも全く頭に入ってこない。


 普段いつも身に着けてるヘッドホンを貸してくれる、ってことは嫌われてはいない、よね?

 こんな事してくれちゃって、これから後悔しても遅いんだから。


 選曲をしながらこの先どうアプローチしてやろうかと、ヘッドホンで包まれた頭の中で考えていた。






相互サイト『Clovers'Graffiti』リディア様リク)

2014.10.11







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